「勤務時間」は本当に重要なのか
これらのことは生産性にどう影響するのだろうか。
今回のデータセットには、チームがリモートワークに移行する前の時間の追跡は含まれていないが、平均して1日の時間帯と時間当たりの生産性に相関関係は見られなかった(2つ目のグラフを参照)。
22チームはのべ39件のビジネスプロセスを実行し、各チームのメンバーはそれぞれのタスクを行う時間を選ぶことができた。つまり、「1時間当たりの生産性が一定になるように、メンバーが仕事のスケジュールを自然に調整していた」ことになる。
それでも、チームオーバーラップが多い少ないという要素は、生産性に重要な意味があった。1時間当たりの生産性とオーバーラップの関係に注目すると、チームで行うプロセスは3つのカテゴリーに分類される。すなわち、チームの他のメンバーがオンラインでいることが特定のタスクの遂行に役立つか、妨げになるか、あるいは影響がないかの3つだ。
●41%のプロセスはオーバーラップと正の相関関係にあった
必要な情報をくれたり、仕事の進め方を明確にしてくれたりする同僚がそばにいることは、多くの場合、生産性の向上につながる。今回調査した39件のプロセスのうち16件は、午前9時~午後5時は他の時間帯に比べて生産性が25%近く向上していた。そのような仕事の例として、保険の見積もりにおける保険料率の最終決定、生産計画の作成と承認、在庫の変更の管理などがある。
●33%のプロセスはオーバーラップと中立的な関係にあった
39件のプロセスのうち13件は、メンバーが同時に仕事をしているかどうかが、生産性に影響しなかったと見られる。したがって、これらの仕事はどの時間帯に遂行しても大きな影響はなかった。例として、発注書の作成、製品の需給状況や倉庫の配置の確認などがある。
●26%のプロセスはオーバーラップと負の相関関係にあった
39件のプロセスのうち10件は、通常の勤務時間中の生産性が、オーバーラップが少ない時間帯より28%低かった。ここで懸念されるのは、メンバーがこれらのプロセスを行う時間帯が、オーバーラップが多い午前9時~午後5時が中心だったことだ (ただし、今回のデータでは、負の相関関係の一部が、タスクの最も難しい部分の作業をオーバーラップの多い時間帯に移動させたことによる可能性も否定できない)。例として、発注書の発行やデータベースの従業員情報の更新などがある。
第1のカテゴリーのプロセスは、メンバーが同時に作業することが利点をもたらす。第2のカテゴリーのプロセスは、長期的にリモートで行うものとして、特に適しているだろう。第3のカテゴリーのプロセスは、メンバーがリモートでも気を散らさずに作業できるような明確な規範が必要になる。