
リモートワークやハイブリッドワークが常態化したことで、午前9時~午後5時までの「標準的な勤務時間」はなくなった。通勤がなくなり自由に働けるようになった一方、チームのメンバーが終わりなく仕事をするようになったことで、いくつかの弊害も生まれている。新しい働き方を前提とした新たな規範を設けるためには、現状を正確に認識しなければならない。本稿では、筆者らの調査を通じて、リモートワークを持続可能な働き方に変えるための方法を提示する。
分散型コラボレーションに取り組み始めてから約1年半。世界中の企業が「仕事中」の意味をそれぞれ再定義している。すでにメールやスマートフォンなどのデジタル技術が勤務中と勤務時間外の区別を曖昧にしているが、多くのホワイトカラーにとって、残されていた垣根を新型コロナウイルス感染症のパンデミックが取り払いつつある。
バランスを取り戻して生産性を維持するために、リーダーは従業員の働き方に何が起きているのかを正確に認識する必要がある。
従来のデジタルテクノロジーは一般に、多忙なエグゼクティブ(トップダウン)か、現場支援や営業担当者、遠隔地で働く従業員(アウトサイドイン)が最初に採用してきた。しかし、新型コロナウイルス感染症は多くのオフィスで、チームが常にデジタルテクノロジーだけを使って仕事をすることを強いている。
午前9時~午後5時という「通常の勤務時間」に物理的な場所で働くことに慣れていた平均的な労働者や現場のマネジャーにとって、これは突然の変化であり、方向を見失って、新しい計画と想定が必要になった。
さらに、ハイブリッドやリモートの選択肢が主流になりつつあり、企業はパンデミックの1年で得たポジティブな教訓とネガティブな教訓の両方を取り入れていかなければならない。「ニューノーマル」は、仕事そのものに新しい規範を求めている。
こうした新しい仕事の規範を決める基本的な要素の一つは、「チームオーバーラップ」だ。これは、チーム内でメンバーの勤務時間がどの程度一致するかという概念である。
物理的な職場では、標準的な勤務時間が決まっていれば、かなりの割合でメンバーがオーバーラップする。それに対しリモート/ハイブリッドワークでは、そこまでのオーバーラップが当たり前には起こらない。
リモートワーク中のチームオーバーラップのパターンと意味を理解するために、筆者らは2020年にリモートワークに移行したフォーチュン 500企業の6社を対象に、187人の仕事上の行動を調査した(いずれもソロコのクライアントである。ソロコはチームのデジタル上のやり取りを表す「ワークグラフ」の解析を手がけるソフトウェア企業で、本稿筆者の3人が所属している)。
サンプルの187人は22のチームに分散しており、チームの規模は平均約10人だ。全員が以前はオフィスの場所と勤務時間が明確に決められていたが、現在はほぼ全員が異なる体制で勤務している。
チームの仕事上の行動にはいくつかパターンが見られた。特にリモート/ハイブリッドワークの新しい規範をつくる際は、オーバーラップを考慮することが重要であるとわかった。
こうした傾向を理解することは、新しい働き方を模索するチームをどのように率いるかを考えるうえで欠かせない。マネジャーはこれらの分析結果をもとに、チームのデジタルワークの指針を策定して、リモート/ハイブリッドワークの柔軟性を維持しつつ、この1年半の間に多くの従業員が経験した心理的および実用的なデメリットを軽減することができるだろう。