CEOは日常的にハイブリッドに対応していた

 全従業員がほとんどの時間、オフィスにいることが重要だと強調するCEOもいる。コラボレーションが容易になり、若手の従業員を教育したり、指導したりする機会が増えるといった利点がある。

 また、アップルのティム・クックCEOのように、特定の曜日に限って全従業員の出社を提案するリーダーもいる。

 しかし、従業員がたいていはオフィスで過ごすべきだという考え方は、ある事実を見落としているかもしれない。CEOは以前から、本社の中で仕事をするのと同じだけ、本社の外で仕事をしていた点だ。

 筆者らの2018年の調査で、CEOが勤務時間中に本社で過ごす時間はわずか47%で、残りは社外での会議や出張、リモートワークに費やされていることが明らかになった。また、会議の61%が対面だが、3分の1以上はビデオ会議、メール、電話によるデジタルコミュニケーションだった。

 筆者はここ数カ月、企業が戦略的なハイブリッドシステムを構築することを提唱してきた。

 まず、それぞれの従業員がどのように戦略に貢献しているかを正確に見極めてから、在宅勤務とオフィス環境のどちらがそれをサポートするのに適しているかを分析するというものだ(全従業員を一律に出社させようとするのは、ひどいアイデアだと、筆者は考えている)。

 CEOは、チームや機能ごとにオフィスとリモートの時間の適切な割合を考えるよう組織を指導するにあたり、自分自身が以前はどれくらいオフィス以外で過ごしていたかを振り返るとよい。

 また、オフィスで過ごす時間には、機能的な価値以上に象徴的な価値があることを、CEOは認識しなくてはならない。筆者らが2018年の論文で指摘したように、「誰とどれくらい対面しているかは、CEOがどの仕事や相手を重視しているかを判断する手がかりになる。CEOはさほど気づいていないが、人々はこの点を注視している」。

 コロナ後に多くの従業員が在宅勤務を中心にすることを選択した組織であっても、CEOは他のレベルの同僚よりも多くの時間をオフィスで過ごす必要があるだろう。