ビデオ会議のネガティブな影響を抑える
幸運なことに、パンデミック前からテクノロジーインフラが十分に発達していたことで、ビデオ会議を広く利用することができた(何百万もの人がリモートで仕事をしようとするなど、ダイヤルアップ接続の時代に想像できただろうか)。
その結果、ビデオ会議はさまざまな意味で非常に効率的になった。筆者の場合、以前は対面で1時間かかっていた会議が、いまではビデオ会議を利用して30分で終わるようになった。
一方で、ビデオ会議に頼りすぎると、さまざまな弊害があることもわかっている。その例が「ズーム疲れ」や、仕事の終わりのサインである通勤がなくなって仕事と私生活の境界が曖昧になることだ。
CEOにとって、ビデオ会議への過度な依存には3つのリスクがある。
●不必要な会議への「飛び入り参加」
対面の会議に比べ、ビデオ会議はCEOにとってログイン、あるいは「立ち寄る」ことがしやすい。CEOがより多くの会議に顔を出すことで、士気を高めたりエンゲージメントを示したりするかもしれないが、すぐに問題になる。
有能なCEOは経営管理業務の多くを人に委ねているが、パンデミック前から、あまりにも多くのCEOが、あまりにも多くの時間を事業運営の評価に費やしているのを見てきた。
ビデオ会議が効率的だと感じているCEOは、ビデオ会議に過剰に出席したくなる衝動に駆られて、この問題を悪化させるかもしれない。こうした行動は、ハイブリッドワーク環境になっても継続、あるいは悪化するおそれがある。
●グループ会議に部下を過剰に招待する
ビデオ会議は人を招待し、追加することも簡単だ。多くの人を招待することでよりインクルーシブ(包摂的)に感じられるが、これも間違いだ。少人数のほうが、率直な発言や参加が可能になる。
2018年の調査で、CEOが会議時間の63%を5人以下のグループで行っていたのは、それが理由だ。会議の規模が大きくなりすぎると、出席しても発言せず、マルチタスクをするようになり、エンゲージメントが低下する。
●1対1ミーティングをビデオに過剰に依存する
筆者らの2018年の調査では、CEOは会議時間の42%を1対1ミーティングに費やしており、そのほとんどが直属の部下、つまりよく知っている人との会議だった。ビデオで新たに関係を始めたり、初対面の人とやり取りしたりするよりも、すでに知っている人とビデオ会議をするほうが容易であるというのが社会通念だ。
しかし、部下と進捗状況を確認するチェックインミーティングをビデオで行うことに慣れても、そうした会議は定期的に直接会って行うことが重要だ。
質の高い関係を築くためには、相互の期待を一致させ(相手に何を期待しているかを互いに把握する)、相互理解を深め(相手の強みや弱み、リーダーシップスタイルを把握する)、相互信頼を築く(相手の動機や意図を信頼する)ことが必要だ。
このような関係構築には、デジタルでの交流よりも対面での交流のほうが、意見の交換や同じ場所に共存するコプレゼンスによる恩恵を得られる。