一人の時間と個人の時間をよりいっそう大切にする
パンデミック前から、CEOのほとんどが仕事の時間とプライベートの時間の境界を維持するのに苦労していた。筆者らの調査では、CEOは週末の79%(1日平均3.9時間)、長期休暇の70%(1日平均2.4時間)を仕事に費やしていた。
さらに、勤務日もCEOの仕事のスケジュールは過密になりがちだ。平均すると、リーダーの時間の75%は事前に割り当てられており、自発的な交流や、ただ考えるためだけの時間は限られている。
パンデミック後に状況を切り替えるタイミングは、リーダーが内省や読書、考えるための時間を増やす機会になるはずだ。しかし、多くのリーダーが逆の方向に進んでしまうおそれがある。
自宅からビデオ会議に参加できるようになったいま、特にグローバル企業のCEOの場合、昼夜を問わずいつでも海外の会議に参加できると思われているため、頻繁に参加しないように自制することが必要になるだろう。
従業員の出勤日を制限している会社では、CEOの通勤時間も削減される(筆者らの調査では、平均的なCEOが通勤に費やす時間は週当たり約7時間だった)。これは「降って湧いた時間」なので、リーダーはより多くの会議を受け入れ、すぐにその時間を無駄にしてしまう可能性がある。そうではなく、一人で過ごす時間を増やすことを考えるべきだ。
外部からの依頼を受ける際にも、自分を律する必要がある。2018年の論考では、市民グループや業界団体を率いるなど、リーダーは必ずしも必須ではない活動に時間を費やしすぎないよう助言した(これらが時間管理を泥沼に陥れるおそれがあることが、筆者らの調査で示されている)。
こうしたグループや団体の会議がビデオ会議に移行したことで、自分の責務の範囲を制限しようという決意が弱まったCEOもいるかもしれない。
スピーチの招待は、ビデオでの参加よりも国を横断する移動が必要な場合のほうが断るのは簡単だ。対面のイベントがまた標準に戻った時には、CEOは以前のように、必須ではない招待を受けることに対して慎重にならなくてはいけない。
筆者らの調査では、CEOが時間の使い方をすべて記録した後、通常2~3時間かけてデブリーフィングを行う。そのミーティングでは、スプリント・エアロシステムズのトム・ジェンタイルCEOが内省したように、個々のCEOの時間の使い方を平均的なリーダーと比較し、より賢明な時間管理の決定を下す方法を特定する。
筆者らの調査に参加したすべてのリーダーが、自分の時間の使い方の盲点を見つけたり、変えたいと思う部分を発見したりするなど、この内省が有益であると実感していた。
パンデミックが収束し、新しいハイブリッドな職場に復帰するにあたって、CEOはパンデミックの間に身につけた新たなリズムやツールを取り入れる最善の方法を考えなくてはいけない。
パンデミック前の仕事の習慣に戻ったり、パンデミック中はうまく機能していたように見えても長期的には効果的でない可能性があるものに過度に執着したりしないよう、気をつけなければならない。
組織がハイブリッドワークを戦略的に採用する必要があるように、リーダーも新たな働き方が導入された職場で自分の時間をどう使うべきか、戦略的に考える必要がある。
"How CEOs Should Manage Their Time in the Hybrid Workplace," HBR.org, August 26, 2021.