(5)接種ルールを社内で周知徹底するための計画を練る

 mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンは2回の接種が必要で、最初の接種を受けてから接種済みの段階に至るまでには5~6週間を要する。したがって企業は、接種完了を義務付けたい時期より何カ月も前に、接種義務化の方針を発表しなくてはならない。

 この点に関して従業員へのコミュニケーションを成功させるためには、どうして義務化するのか、それにより従業員と家族、地域コミュニティ、会社にとってどのようなメリットがあるのかを明確に示す必要がある。

 また、できるだけ多くの従業員にメッセージを伝えるために、メール、パンフレット、動画、ポストカード、ポスターなど、いくつもの方法でコミュニケーションを行うべきだろう。異なる集団に所属する人々に対して効果があるように、パンフレットなどの写真には多様な従業員やモデルを起用すべきだ。

(6)訴訟リスクに未然に対処する

 従業員のワクチン接種を義務化すると、(極めて稀なケースとはいえ)接種により重い副反応が生じた場合、従業員から損害賠償訴訟を起こされるのではないかと、心配する企業もあるかもしれない。

 しかし、安心できる材料がある。米国で承認されている新型コロナウイルス・ワクチンで害を被った人は、労災保険もしくは政府のプログラム(対抗措置傷害補償プログラム〈CICP〉全米ワクチン傷害補償プログラム〈VICP〉)により補償を受けることができる。

 一方、職場で自社のスタッフによるワクチン接種を行おうと考える企業は、前もって顧問弁護士と相談して、職場接種により自社が法的責任を被らないように気をつけるべきだろう。

 ワクチン接種の義務化を成功させられれば、職場における新型コロナウイルス感染症のリスクを減らすことができる。その結果、会社の訴訟リスクを小さくする効果もあるかもしれない。

(7)接種義務化の有効性を数値評価する

 新型コロナウイルスのワクチン接種を義務化した企業は、その取り組みが公衆衛生の改善と自社のビジネス上の利益につながるように、成果をリアルタイムで把握するようにしてもよいだろう。

 具体的には、接種率、接種義務の免除率、従業員の離職率、支出したコストの変動を測定する。従業員の士気や満足度に及ぼす影響も分析するとよい。こうした点をリアルタイムで評価を行う仕組みがあれば、必要に応じて随時、方針や手続き、コミュニケーションの方法を変更し、接種率と従業員満足度を高めることができるかもしれない。

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 従業員のワクチン接種率が高まれば、職場の感染リスクは小さくなる。その点を考えれば、未接種の従業員に接種をうながそうとする企業が多いのも理解できる。

 接種率を100%にすることは不可能だとしても、しっかり計画して義務化することで接種率を高められる可能性は高い。そうして職場の混乱を減らし、職場での感染を抑制できる。それに伴い、その会社の施設が安全だという信頼が従業員と顧客の間で高まるだろう。

 しかし、すべての企業にとって、ワクチン接種の義務化が適切なわけではない。義務化するかどうかを決めるに当たっては、それが自社の従業員と顧客と地域コミュニティを守るうえで最善のアプローチと言えるかどうかを慎重に判断すべきである。


"Should Your Company Implement a Vaccination Mandate?" HBR.org, September 09, 2021.