
コロナ禍の中で柔軟性の高い勤務形態が導入され、通勤時間の削減やワークライフバランスの向上といった多くの利益がもたらされた。だが、会社も従業員も見落としている恩恵がある。自然の中で過ごす時間をスケジュールに組み込むことだ。自然がもたらす恩恵は、心身の健康回復やモチベーション向上に留まらない。創造力を高めたり、社会的つながりを強くしたりすることにも役立つ。本稿では、マネジャーがストレスマネジメントの一環として、従業員が自然の中で過ごす時間を確保できるように、リモートワークやハイブリッドワークを活用するための3つの方法を紹介する。
新型コロナウイルス感染症との闘いは、我々のストレスの主たる要因となっている。米国心理学会(APA)の2020年の調査では、米国の成人10人のうち8人近くが、自分の生活に著しいストレスをもたらす原因としてパンデミック挙げている。
コロナ禍のプレッシャーが加わる前でさえ、米国では仕事関係のストレスがここ数十年間、増え続けている。
しかしながら、パンデミックがハイブリッドワークやリモートワークを加速させたことで、企業のリーダーに新たな機会がもたらされたともいえる。それは、ストレスマネジメントに欠かせない重要なリソースへの従業員のアクセスを助ける機会であり、重要なリソースとはすなわち自然である。
自然の恩恵は、心理的ウェルビーイングに留まらない。自然の中で過ごすことは、従業員が勤務するうえで、より多くのインスピレーションを得たり、創造力を高めたり、社会的つながりを強くしたりすることにも役立つ。
綿密に組み立てられたスケジュールに従い、対面で週5日働くという従来型の勤務形態と決別することを望んでいる人は数多い。
プルデンシャルの「米労働者動向調査」によると、パンデミック中にリモートワークをしていた米国人の87%が、少なくとも週に1日はリモート勤務を続けることを望み、68%がハイブリッドの勤務形態を理想的ととらえている。
こうした従来とは異なる勤務形態は、柔軟性が高く、通勤時間を減らし、ワークライフバランスを改善すると誰もが理解している。しかし、雇用者や従業員が見逃している恩恵が一つある。それはリモートワークやハイブリッドワークが、心身の疲労回復とモチベーションを向上させるために、自然の持つ力を活用しやすくなる点だ。
自然の中で過ごすことが、心身の健康に多くの恩恵をもたらすことを明らかにしている研究の数は、いまなお増え続けている。
過去の研究をベースに、18カ国で1万6000人以上を対象に行った最近の国際的な研究によると、過去4週間に緑地や湖、海を訪れた人のウェルビーイングはよりポジティブで、精神的苦痛はより少なかった。
にもかかわらず、人々の自然とのつながりは減る一方である。たとえば、アウトドア財団が実施した調査によると、2018年に米国人が屋外レクリエーションのために外出した頻度は、2008年と比較して延べ10億回も減っていた。
自然とのつながりが失われている原因として、テレビやビデオゲーム、その他の電子機器がしばしば挙げられる。実際、米国人がスクリーンの前で過ごす娯楽時間は着実に増え続けている半面、屋外で過ごす時間が減っていることを示す研究もある。
しかし、仕事もまた、屋外で過ごす時間を減らしている主たる要因である。
APMリサーチラボの2019年の調査によると、米国人は屋外で過ごすのを阻む最大の障害は仕事だと考えており、回答者のおよそ3分の1が、仕事関連の責務に追われて自然の中で過ごす時間が十分に取れないと答えている。
そのうえ、現代の仕事のほとんどは屋内で行われるだけでなく、座ったままで作業をすることが多い。
従業員が自然によりアクセスしやすく、その恩恵をより享受しやすくするために、マネジャーがハイブリッドワークやリモートワークを活用する3つの方法を以下に紹介しよう。