●みずから模範となることで、教え導く
もちろん、企業が最適な勤務条件を整えて、従業員により多くの時間を自然の中で過ごしてもらおうとしても、多くの労働者がさまざまな理由からそうしないことを選ぶ可能性はある。
その理由としては、屋外で過ごす時間がもたらす数多くの恩恵に関する、知識の欠如が挙げられる。企業のリーダーが、ストレスマネジメントのツールやモチベーションの源泉として自然の力を利用するように促したければ、みずからが模範となって従業員を教え導く方法を考えなくてはならない。
企業が従業員のウェルビーイングプログラムに多額を費やすのは、心理的な健康状態が良好であれば、人々はストレスを感じにくくなり、仕事からより大きな満足感を得られ、よりエネルギーが沸き、創造力が高まり、より積極的に社会活動に参加することをリーダーが認識しているからである。
同様に、自然もウェルビーイングを向上させるという理解を促すことにリソースを振り向ければ、企業はさらなる恩恵にあずかれる。
たとえば、全社会議や社員旅行の場に専門家を招き、自然の中で過ごす時間と人のエネルギーとの関連を示す数多くの研究について講演してもらう。関連情報を盛り込んだ従業員向けの資料を作成したり、従業員が自分の体験談や写真、リソースを共有して自然志向の組織文化を育むためのプラットフォームを社内に構築したりすることもできるだろう。
最後に、マネジャー自身が、ストレスマネジメントやモチベーション向上のために自然の力を有効活用していることをチームメンバーに示し、みずからが手本となって導くこともできる。
マネジャーをはじめとする他の人々が、自然の中で過ごすことの恩恵にあずかっているのを見れば、ハイブリッドワークやリモートワークがもたらす自由を活かして、自然の中でもっと多くの時間を過ごそうという意欲が従業員の間で高まるはずだ。
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パンデミックは仕事に関わるストレスを助長しただけでなく、従来にはなかった方法で勤務スケジュールを組み立てたり、従業員を管理したりすることを雇用者に促した。テクノロジーの進歩と、よりよいワークライフバランスを実現させたいという米国人の熱意の高まりも、リモートワークやハイブリッドワークの導入を後押しした。
このような勤務形態だからこそ、ストレスマネジメントとモチベーション向上のために、自然というリソースが使えることを十分に理解し、実際にその恩恵を活かすことができる企業のリーダーや労働者が増えるほど、恩恵を得られる企業や労働者の数も増えるだろう。
"Bring the Outdoors into Your Hybrid Work Routine," HBR.org, September 16, 2021.