脳の報酬メカニズムを刺激する

 脅威へのもう1つの対処法は、脳における他の4つの報酬要因のうち1つを誘発することだ。

 ワクチン接種の場合は、従業員に他者との関係性を感じさせる。たとえば、チーム全員でワクチン接種会場に行き、終了後にランチを食べながら仕事以外のことについて会話をするなどだ。

 自律性の低下による不快感(「なぜ私が強制されなければならないのか」)は、従業員同士の関係性をより強く感じさせることで(「こんなにチームを身近に感じたのは久しぶりだ」)、その一部を相殺することができる。

 マネジャーは、脳の別の報酬要因である確実性を従業員が強く感じさせることもできる。変異するウイルスと向き合う中で、絶対的な確実性を与えるのは難しいが、透明性とコミュニケーションによって明確さをもたらすことは可能である。

 会社がワクチン接種を義務化すると、従業員は次のような質問をするかもしれない。

・ワクチンを接種しないと職を失う恐れがあるか。
・ワクチン接種の義務を宗教上の理由によって免除することは公平なのか。
・雇用主が私の健康管理に深く関与するようになるのではないか。

 これらの質問の中には、「わからない」と答えるものもあるかもしれない。しかし、リーダーは答えを持っていなくても質問には答えなければならない。組織がこのプロセスに取り組む際、マネジャーはチームと頻繁にコミュニケーションを取り、複数のチャネル(メールやスラックなど)で定期的に情報を共有することが重要だ。

 同じように重要なのは、完全な真実を共有することだ。たとえそれが、皆が聞きたくないことでもだ。研究によると、望まない答えを得るのは、答えを何も得られないよりはいい。たとえ些細なことでも有益な情報を提供することで、相手は確信とまではいかなくても、問題をより明確に理解することができる。

 私たちは皆、本来的にさまざまなバイアスや信念を持っている。いまはすべての反応に対処し、義務化に対する解決策を見つけることに、混沌さを覚えるかもしれない。しかし、脅威と報酬に対する脳の反応を理解することで、ワクチン接種の義務化をよりスムーズに進めることができる可能性がある。

 義務化に対する脳の反応を、自社の方針を検討する際の中心的な枠組みとして用いることは、私たちが持ち合わせている最も確かな方法の一つだ。


"Why Mandates Make Us Feel Threatened," HBR.org, September 23, 2021.