●自分のコントロールが及ぶ範囲に注力する

 採用プロセスは企業によって異なり、かかる時間もさまざまだ。最大4回の面接で決まる会社もあれば、10回の面接、専門知識の試験、リファレンスチェックまで実施する会社もある。

 採用まで1カ月や2カ月の場合もあれば、3カ月以上かかる場合もある。採用情報の掲載後や面接後に、求人ポジションに変更があったり、リーダーが交代したり、予算に何らかの変化が生じたりすることもある。いったい、何が起きたのかと思うだろう。

 これらはどれも、あなた自身にはどうにもできない問題だ。

 自分が本当に、その会社の組織文化に合っているかどうか。リクルーターが突然、姿を消して、連絡が途絶えてしまわないか。転職活動を思い立ったタイミングに、あなたが探している分野で求人があるかどうか。何社応募すれば、これだと思える仕事が見つかるのか。

 このような状況もまた、あなたがコンロトールすることはできない。このようなことに気を取られてしまうと、気力を奪われ、転職活動を始めようとも思えなくなる。

 しかし、自分の力が及ぶところに集中すれば、ポジティブなエネルギーが高まり、勢いがつく。自分の手に余ることではなく、以下のことにエネルギーを使おう。

・自分のやりたいことを見極めて、新たな仕事に活かせるスキルや能力が具体的に伝わるように、職務経歴書やリンクトインのプロフィールを仕上げる。
・自分と同じ分野の人々が集う交流会に参加する。
・面接の準備をする。
・リファレンスチェックで問い合わせを受けると思われる人々に連絡を取り、それぞれ押さえてほしい領域を確認し、前向きに話してくれるように依頼する。

 ●深呼吸をして、手に入れた仕事が正しい仕事だと信じる

 メンタル面の準備も、職務経歴書の準備と同じくらい重要だ。転職活動は、感情の変化を伴うプロセスである。気分が上がる時も(面接がうまくいった場合)あれば、下がる時(他の応募者に決まってしまった場合)もあるように、激しい感情の起伏にさらされる。

 新しい仕事が決まった後でさえも、目の前のチームメンバーが成功できるように道筋をつけ、会社を退職し、新しい職場に馴染むまで、ストレスを感じるかもしれない。何度も面接を重ねた後に断られれば、多くの時間を無駄にしたように感じることもあるだろう。

 しかし、どの失敗の中にも成功を見つけられるように、見方を変えてはどうだろうか。

 どの面接も、どの出会いも、正しい仕事に就くための練習だ。本当に就きたいと思っていた仕事で不採用になった時には、チャンスを失ったように感じるものだ。しかし、それは自分にとって適切な機会ではなかったのだと、頭の中でストーリーを書き換え、本気で信じるようにしてみる。

 不採用になった時の乗り越え方を、あらかじめ準備しておく。たとえば、1日だけは嘆いて、経験から学びを得る時間にしてもよい。しかし、その日が過ぎたら「あの仕事は自分に合わなかったのだ」と思い直す。このように境界を設定することで、自分に向いていなかった仕事の機会を何度も思い返して、悪循環に陥るのを防ぐことができる。

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 転職活動で最も重要なのは、自分自身に思いやりを持ち、「自分にはもっとできることがあるはずだ」から「自分は最善を尽くしている」へと考え方を変えることだ。

 冒頭で紹介したフレッドは、職探しに時間をかけているせいで、仕事や家族、その他の責任をおざなりにしていると感じていた。そこで彼は、自分にこう言い聞かせた。「よい仕事を見つけるために、いま投資すれば、やがて人生のあらゆる部分が豊かになるだろう。もっときちんと報われる環境に移れば、この疲労もいくらか和らぐはずだ」

 そして、その通りになった。フレッドは理想の仕事を見つけると、エネルギーも幸福感も何倍にも膨らんだのだ。


"How to Job Hunt (When You're Already Exhausted)," HBR.org, October 07, 2021.