●個人のパーパスと企業のパーパスを結びつける
ここから、すべての仕事は意義深いものにできるという信念の第3の意味につながっていく。
リーダーシップの重要な要素は、会社のあらゆるレベルの従業員に対して、自分を突き動かすものについて考えるよう促すだけでなく、それを企業としてのコレクティブパーパスと結びつけるように導くことである。
筆者がベスト・バイに在籍していた当時、ボストン近郊にあるベスト・バイの店舗マネジャーが、チームメンバーの全員に「あなたの夢は何ですか」と質問するようにしていた。メンバーの夢の実現に協力するだけではなく、メンバーの夢を企業のパーパスに結びつけようとしたのだ。
従業員一人ひとりが、自分も企業のパーパスに深く関わっていると感じることで、エネルギーが生まれ、スキルの向上と合わせて、その店舗が素晴らしい業績を上げるための大きな推進力となった。
その中から、ある店員の例を挙げよう。彼女の夢は親元を離れてアパートで独り暮らしをすることだったが、その時の時給では実現できずにいた。
そこで店舗マネジャーは、顧客の生活に影響をもたらすことは、すなわちよりよいサービスを提供するというベスト・バイのパーパスであり、それはまた、彼女と両親の生活にも影響を与えるものだと理解できるように手助けをした。つまり、もし彼女がスーパーバイザーかアシスタントマネジャーに昇格すれば、自分のアパートが手に入るのだ。
その結びつきがわかると、彼女はそれまでよりもずっと仕事に力を注ぐようになり、店長とチームのサポートも相まって、やがて昇格し、自分の夢をかなえた。
今日、企業のパーパスについて多くの議論がなされている。もちろん、それ自体はよいことだが、個人の動機に結びつけない限り、企業のパーパスには魂が宿らず、足元もおぼつかない。
個人のパーパスと企業のパーパスの結びつきを明確にして、理解させることは、最高経営幹部から店舗マネジャーに至るまで、すべてのリーダーにとって最も重要な役割だ。
このように極めて人間的な目的意識を目の前の仕事に当てはめることで、仕事に対するアプローチが変わり、その結果として仕事に打ち込む度合いが変わる。
その意識さえあれば、仕事は常に簡単で楽しいものになるかといえば、無論、そんなことはない。誰にでもうまくいかない時があり、どんな仕事にも試練はある。個人の目的意識だけが、職場で人々を奮い立たせるわけでもない。
とはいえ、毎日の業務を「私たちはなぜ、それを行っているのか」という、より大きな目的意識に結びつけることができれば、人はエネルギーに満たされ、動機づけられ、方向性を持つことができる。石切り職人であれCEOであれ、ここが正しい出発点なのだ。
"How to Reframe What Work Means to You," HBR.org, October 18, 2021.