その結果は非常に明快だった。(『ジャーナル・オブ・アプライド・サイコロジー』に最近掲載)。日々の疲労感とカメラの使用に正の相関が見られた一方で、従業員がバーチャル会議に費やした時間の長さとの間に相関はなかった。この事実は、会議中にカメラを常にオン状態にすることが、疲労問題の核心であることを示している。

 さらに興味深かったのは、疲労によって従業員のエンゲージメントが低下し、会議での発言力も低下したという結果が示されたことだ。カメラをオンにすることは一般に、これら2つの課題――エンゲージメントと発言の影響力――の解決に役立つと考えられている。しかし今回の調査を通じて、実際には、カメラの使用で生じる疲労感が、こうした目的の達成を損なっている可能性があることが判明した。これは注目に値する。

 さらに複雑なことに、この結果を従業員の属性と合わせて分析したところ、カメラに映ることが特定のグループ――特に女性や新入社員――にいっそうの疲労感をもたらすことが判明した。これらのグループでは、カメラが自己呈示コストを増幅させ、カメラの使用に伴う疲労をより強めていると考えられる。

 一般に、女性は組織内でより大きな社会的プレッシャーに直面している――社会的地位が低いと見なされたり、より厳しい評価を受けたりすることが多い――ため、カメラに映ることが男性よりもよりストレスになる可能性が示唆される。また女性は、常に身だしなみを整えておくことを求められる「グルーミングギャップ」の犠牲になっている。さらにパンデミック中は、育児の負担が女性に偏重したため、家族や子どもに関連する「じゃま」が画面背景に現れる可能性が高まり、いっそう仕事へのコミットメントが低いと思われかねない状況があった。

 新入社員も同様に、自己呈示のプレッシャーを受けやすいが、その理由は女性と異なる。具体的には、彼らは「未熟な状態」であるがゆえに、自分が組織に相応しい優れたパフォーマーであることを示す必要性を強く感じる。また、プロフェッショナルとしてのイメージを確立し、職場の社会規範を理解しようと努力しているが、カメラをオンにしたバーチャル会議という限られた環境の中で、それらを達成することは難しいだろう。

 だからといって、男性や経験豊富な従業員はバーチャル会議の疲労と無縁だと言いたいのではない。重要なのは、カメラをオンにすることが人よりも負担になるメンバーがいるかもしれないと認識する必要があるということだ。

 これらの結果から、特に疲れを感じ始めた時は、ビデオ通話のカメラをオフにすべきだと言えるだろう。しかし、ほかにも解決策はある。

 筆者らが話を聞いた従業員の間では、ズームのようなプラットフォームで自分の画面を非表示にするというアイデアの人気が高かった。それ以外にも電話で会議に参加する「ウォーキングミーティング」も好評だった。これならば従業員に立ち上がって動くように促すことができる。

 これらの結果はまた、マネージャーがカメラに関する規範を確立するだけでなく、従業員と対話し、フィードバックを得るという重要な役割を担っていることも示唆している。従業員はどれくらいの頻度でカメラに映ってもよいと思っているのか。カメラの使用については、もっと従業員の判断に任せるべきなのか。カメラをオンにしない場合、エンゲージメントの「見た目」をどのようにとらえ直すべきだろうか。

 最後に、好ましいバーチャルワークスペースの特徴や生活への影響を描き出すためには、新しいテクノロジーを検討することも不可欠だ。たとえば、デバイスをに置けば、従業員はカメラを直視することなく、横並びで一緒に仕事ができるため、疲れを感じにくいのではないか。また、ゲーミフィケーションの活用が増加するに伴い、アバターを利用したり、バーチャルなオフィス環境を構築したりする技術が、今後急激に広まるのではないか。

 バーチャル会議が定着することに異論を唱える人はあまりいないだろう。しかし、カメラをどのように使うかという点には、まだ議論の余地がある。


"Research: Cameras On or Off?" HBR.org, October 26, 2021.