
従業員同士の関係性を「家族のようだ」と表現することが、自社のブランディングに有効だと考える人は少なくないだろう。たしかに、家族的な関係が付加価値になることはある。しかし、たいていの場合、それは組織にとっても従業員にとっても有害だ。上司と部下の適切な距離感が失われてマイクロマネジメントを誘発したり、組織や同僚を守るために非倫理的行為に手を染めたりする可能性が高まるからだ。本稿では、家族的な文化の問題点を明らかにしたうえで、企業が健全な組織文化を育む方法を紹介する。
この10年間で求人情報を見たことがある人や、新入社員向けオリエンテーションに参加した人は、企業文化を説明するのに「家族」(ファミリー)という言葉がやたらと使われているのに気づいただろう。
「私たちは家族です」
「(企業名)ファミリーにようこそ」
「私たちは、会社のミッションに邁進する家族です」
驚くことではないかもしれない。何しろ私たちは、起きている時間の大半(人生の約3分の1)を職場で過ごすのだ。
同僚との関係は、さまざまな機能を持つ。たとえば、キャリアの成長を支えてもらったり、感情面でサポートしてもらったり、友情を育んだりすることもある。職場で築く関係が家族の関係と似ていると感じるのは、当然のことだろう。
ただし、それがどのような結末を迎えるかは、組織の文化次第だ。
筆者はリーダーシップ開発トレーナーとして、さまざまな組織が過ちを犯すのを目にしてきた。その中でも、マネジャーやハイパフォーマンスチームが犯す最大の過ちがこれである。
たしかに、尊敬や共感、思いやり、帰属意識といった「家族的」文化の要素は付加価値になりうる。しかし、家族的な企業文化を売り物にすることは、最終的に、心理的な満足感以上に害をもたらすのだ。