公表するか、黙っているか
「制度を乱用しているのではなく、実は(不妊治療という)医療行為を受けているのだと、弁明しなければならない気がしていた。(中略)やがて、その時が訪れた。実は大変なことに取り組んでいるのだと、はっきり伝えるべき時がきた」
あなたが不妊治療を受けていることをマネジャーや同僚に伝えるかどうかは、重要な決断だ。それによるプラスとマイナスの両方があるからだ。
仕事に集中できないと思われたり、昇進の対象から外されたり、人材育成から取り残されたりと、キャリアにマイナスになることを恐れて、公表しないことを選ぶ女性もいる。そもそも不妊治療はプライベートなことなので、その苦労を仕事に持ち込みたくないという人もいる。
このような懸念、あるいは公表することで得られるプラスは、その人が置かれた状況により異なる。その決定は非常に個人的なものなので、自分の人生と仕事の状況に基づいて総合的なプラス面を評価する必要がある。
重要なのは、公表するかどうかの決定は、あなた自身が主導権を握って下すことだ。誰にどのくらい伝える必要があるかは、あなた自身が決定できる。不妊治療を受けていることを職場で公表する際、検討すべき事項を挙げておこう。
・治療を公表することで何を得たいのか。診察のスケジュール管理や、仕事が終わらなかった時、サポートしてもらいたいか。それとも、マネジャーにやる気がないと思われたり、転職先を探しているのではと思われたりしたくないので、事実を公表する必要性を感じているのか。
・キャリアに与える潜在的なインパクトは何か。子どもを持ちたがっていることを知られたら、人材育成の機会(たとえば昇進や大きなプロジェクトへの参加)が失われると思うか。上司は意識的あるいは無意識に、あなたを成長支援プロジェクトから除外すると思うか。
・マネジャーや同僚にどれくらいのサポートを期待しているか。彼らはあなたの置かれた状況を理解して、便宜を図ってくれると思うか。それとも、どのような反応をするか見当がつかないか。あなたの組織やマネジャーは、どれくらい家族持ちに優しいか。
このような問いを検討すると、公表するための戦略を練る助けにもなる。
たとえば、診察予約を管理するためには職場のサポートが必要だけれど、子どもがほしいという意図を知られれば、キャリアアップにマイナスになると考えるべき理由が存在し、さらに上司が支援的でないと予想される場合、公表内容は漠然とさせておくことを勧める。ある治療を受けていて、スケジュールがはっきりしない時があることを説明して、マネジャーと適切な対処法を見つけよう。
不妊治療を受けていることを公表すると決めたら、次のように話を進めるといいだろう。
・目的を告げる:単に秘密を抱えていることの重荷を下ろしたい、あるいは頻繁にオフィスから姿を消す理由を説明したいと考えて、事実を公表したいと思う人もいるだろう。その場合は、マネジャーに状況を知っておいてほしいことを明快に告げればよい。柔軟なスケジュールや出張の予定などでサポートが必要なら、マネジャーと話し合い、あなたとチームにとって最もうまくいく計画を考えよう。
・不妊治療は不確実な部分が多いことを明確にする:多くのマネジャーは、不妊治療の結果や治療期間の不確実性を知らないかもしれない。そして、不妊治療を受けているなら近いうちに産休や育休に入ると考えて、この楽観的なシナリオに沿った計画を練るかもしれない。それによって、あなたは長期的なプロジェクトや要求の厳しいポジションには興味がないと思うかもしれない。したがって、この機会に不妊治療とは不確実なプロセスで、治療結果は予測がつかず、もしかしたら治療が長期にわたる可能性を明確に伝えることが不可欠だ。不妊治療のために仕事の優先順位を下げるつもりがないなら、そのこともはっきり伝えよう。
・質問に答える準備をする:ほとんどのマネジャーは、不妊治療中の部下をサポートする方法を訓練されていないことを覚えておこう。あなたの上司も不妊治療に関する知識が乏しく、それがあなたの仕事やチームにどんな影響を与えるのかを質問したいと思うかもしれない。できる限り双方向の話し合いにすることを心がけよう。