キャリアの変化を管理する

「多くの友人が転職して、『あなたも来たほうがいい。最適なポジションがある』と言ってくる。しかし、いまはタイミングがよくないと私は答えている。現在の会社を辞めて、新しいところに行くのは気まずいと思っている。(a)転職先で不妊治療に必要な柔軟なスケジュールを認めてもらうために奮闘するのがつらい。あるいは(b)転職したばかりなのに、妊娠して産休に入りたくない。それは新しい会社に対して失礼だと思う。この2つの思いが頭の中を巡っている」

 仕事を両立する日々の難しさに加えて、不妊治療はキャリアプランに長期的な影響を与える可能性がある。

 妊娠・出産そのものは、比較的明確なタイムラインがある(9カ月間の妊娠期間と、一定の育児休暇期間)が、不妊治療で最も難しいことの一つは、それがどれくらい続くかわからないことだ。このため多くの女性がキャリアップのチャンスをつかむことを躊躇して、現在のポジションで足踏み状態になり、キャリアプランを非常に難しいものにする。

 実際、筆者らが話をした多くの女性は、支援的的なマネジャーの下に居続けたい、転属や転職によるさらなるストレスは避けたい、新しいポジションに就いても妊娠したら身を引かなくてはいけないことに罪悪感を感じるなど、さまざまな理由から同じポジションに留まっていた。

 この問題を解決する魔法はないが、不妊治療が自分のキャリアに与えうる影響を意識することは重要だ。治療の事実を公表する決断と同じように、自分のキャリアに対する姿勢や、仕事上のチャンスに手を伸ばさない理由を中心に考えてみよう。仕事上の何らかの変化がストレスになりそうなら、そのプロジェクトやポジションを引き受けるタイミングではないのかもしれない。

 しかし、不妊治療は治療期間やその結果に不確実性が高いことを考えると、妊娠する可能性があるからと仕事上のチャンスを逃すことが、最善策ではない場合もある。

 筆者らが話を聞いた女性の多くは、治療中は転職を控えていたが、周囲のサポートを感じられなくても、現在の職場あるいは新しい職場でキャリアアップに励んだ人たちもいた。その際、治療に関係がある福利厚生や働き方の柔軟性についてはっきりと尋ねることで、自分が支援を受けるための準備を着実に整えている。

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 妊娠までの道のりは人によって異なる。ある人にはうまくいったことが、別の人でもうまくいくとは限らない。不妊治療と仕事を両立することは極めて重大な課題だ。ある女性は、「薪炭の上を歩き」ながら「山を登る」気分だと語った。

 しかし、もし適切なサポートを得られたら、このような気分になるとは限らない。自分を労り、この治療があなたの人生とウェルビーイングに大きなインパクトを与えることを意識して、それが友人であれ、信頼する同僚であれ、オンライン支援グループであれ、支援を求めよう。

HBR編注:本稿では、不妊問題を経験している女性に焦点を当てている。筆者らが話を聞いた相手が全員女性であったからだ。だが、本稿の内容は不妊問題を経験しているあらゆる人に当てはまる。


"Navigating Work While Undergoing Fertility Treatments," HBR.org, November 4, 2021.