
リーダーは、チームが対面で仕事をすることの利点から、オフィス再開とともに従業員が出社勤務に戻ることを切望している。だが、そうした強い思いとは裏腹に、復帰を急げば、利益よりも多くの損害が生じかねない。オフィス復帰に伴うストレスが、従業員のメンタルヘルスを悪化させ、意欲や生産性を低下させるおそれがあるからだ。そこで筆者が提案するのが、「再統合期間」を設けて、出社再開に伴う不安に対処することだ。少しずつ日常に戻る準備期間を持つことで、パンデミックがもたらした状況の変化に適応できるようになる。本稿では、再統合期間を有効に活用するための5つの方法を紹介する。
新型コロナウイルス対策の規制が徐々に緩和され、リーダーは従業員のオフィス復帰を切望している。だが、チームを対面で集合させたいというリーダーの強い思いとは裏腹に、復帰を急げば、かえってネガティブな影響のほうが大きくなりかねない。
心理学者らは、私たちが社会生活にゆっくりと戻ることを推奨しているが、リーダーはどうすれば職場でそれを実践できるのだろうか。
マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によれば、オフィス復帰がメンタルヘルスにネガティブな影響を与えたと従業員の3人に1人が回答し、その理由として不安、気分の落ち込み、全般的な苦痛を挙げている。また、社会的相互作用に不安を感じる人もいる。
こうしたストレスは、従業員の心身に大きな打撃を与えるだけでなく、生産性、エンゲージメント、リテンション(定着)にも影響を及ぼす。たとえば、フルタイムでの出社勤務を余儀なくされた場合、従業員の40%近くが退職を検討すると答えており、その多くは若年層だ。
オフィス復帰に伴うストレスは、この1年半の間に従業員が直面したメンタルヘルスの問題を悪化させる。
米国勢調査局が2020年に行った調査では、42%が不安や鬱の症状を訴え、前年に比べて11%増加している。米国疾病予防管理センター(CDC)は、薬物乱用、救急外来の受診、ヘルプラインへの通報が増加していると報告している。
その間、米国の労働者の76%がバーンアウト(燃え尽き症候群)に苦しんでいる。パンデミック前から増加傾向にあったが、その主な要因として半数以上が新型コロナウイルス感染症を挙げている。
筆者はデジタル人類学者として、またアドバイザーとして、企業が革新的かつ創造的な文化を構築することを支援している。これまでの経験と近著Hustle and Float(未訳)を出版するまでの研究から示唆されるのは、その解決策はオフィス復帰を先延ばしにすることではなく、「再統合期間」を設けることで出社再開に伴う不安に対処することだ。
この期間をうまく利用すれば、チームは少しずつ日常に戻り、変化するパンデミックの状況にみずからを適応させることができる。従業員をより意欲的かつ生産的にする再統合期間を、有効に活用するための5つの方法を以下に紹介する。