●社交活動は少しずつ、ゆっくりと再開する
オフィスに復帰する従業員を迎え入れる職場では、失われた時間を取り戻すために、仕事以外の集まりや社会活動を数多く計画しようと思うかもしれない。しかし、孤立に対する人々の反応を観察研究している心理学者らは、急ぐべきではないと強く主張している。
孤立していたり、狭い範囲に閉じこもっていたりすると、大人数の同僚との付き合いがうまくできないと感じることがあるかもしれない。新型コロナウイルス感染症に関連して握手やマスク、屋内での食事をめぐるマナーが変化する中では、なおのことだ。
臨床心理学者のドーン・ポッターは、「パンデミックの間、最も遠ざかっていた社会活動に関するマナーをすべて学び直すことは、肉体的にも精神的にも疲弊するものだ」と説明する。
何千人もの従業員を擁する大手テクノロジー企業に勤務するクライアントは、従業員300人以上を集めて行われた部門の「ウェルカムバック」パーティの話をしてくれた。その催しで彼は、安全性に不安を感じ、同僚との交流に疲弊してしまったという。
完全に回復するのに1週間近くかかったが、彼自身、自分は外向的な性格だと思っている。会社には部門全体のイベントを開催する前に、もっと小さな集まりから始めてほしかったと、筆者に話してくれた。
こうした疲弊を避けるには、まず会社全体で集まる前に少人数のグループでの会合を計画し、ソーシャルスキルが相当に必要とされる対面式のイベントを行うたびに、回復するための時間を設けることだ。
新型コロナウイルス感染症に付随する不安を避けるために、従業員にみずからの境界線を共有してもらい、それを尊重したイベントを企画する。たとえば、屋内での食事に抵抗を感じている場合には、飲食を伴わない会合を開くのがよいだろう。
幸いなことに、これは一時的な問題にすぎない。交流の仕方を学び直せば、どこまでなら快適で、どこから不安やストレスを感じるのか、新たなコンフォートゾーンを見つけられるはずだ。
●チームで経験を共有する習慣をつくる
心的外傷後成長(PTG)とは、トラウマを経験した人がその経験に意味を見出し、ポジティブな方法で前進できるようになる状況を指す。
従業員がパンデミックの衝撃と混乱から立ち直れずにいる中、組織は従業員がそれぞれの経験を共有し、過去数カ月を振り返る機会を設けることでサポートできる。
そのような機会があれば、コミュニティ意識や連帯感も生まれる。振り返りの時間を優先的に設定することで、士気が高まり、チームの信頼関係も強まる。オフィスに復帰した時の一度限りではなく、月ごとや四半期ごとに継続して行う。
たとえば、ゼンデスクでは「エンパシーサークル」(共感の輪)というファシリテーターが主導する集まりを開催するようになった。従業員がそれぞれの経験を共有し、同僚の話を聞き、コミュニティとして一つになることができるものだ。参加した従業員の95%が、このイベントを職場での安心感を高めるポジティブな体験だと評価している。