●回復するための時間を増やす
バーンアウトを防ぐには、さらに抜本的な対策が必要な場合がある。組織の中には、必要とされる休息を確保するために、全社的な有給休暇を提供しているところもある。
リンクトインは、全従業員1万6000人に1週間の休暇を与えた。モジラは月次の有給休暇を導入し、全世界の従業員を対象に1週間の休暇も提供した。全社的な休暇の利点は、自分が働いていないことに罪悪感を感じる人がいなくなることだ。ほかにも、フートスイート、バンブル、ナイキ、ウォーター・アンド・ウォール、IPGメディアブランズなどの企業が、同様の取り組みを行っている。
企業はこのような措置を取ることを躊躇するかもしれないが、バーンアウトの長期的な影響は、従業員に休暇を与えることによる短期的なコストを上回ることを示す証拠がある。たとえば、デロイトの最新調査によれば、十分な休暇を取らない労働者は学習能力、批判的思考力、共感力が低下し、パフォーマンスに影響を与えるという。
筆者は数カ月前、クライアントで芸術分野を専門とする中規模コンサルティング会社のTRGに、全社的に1週間の休暇を取ることを提案した。同社は秋に向けてノルマを達成する必要があったが、従業員は深刻な疲労を抱えていた。社内調査では、現在の環境に疲労を感じているスタッフの割合が57%と、パンデミック前の14%から大幅に上昇していた。また、士気も生産性も低下した状態だった。
1週間の休暇(経営幹部を含む全従業員が対象)後、個別回答および経営幹部の観察による社内調査を行ったところ、従業員は休暇前に比べて意欲が増し、創造性が高まり、生産性も向上したことが明らかになった。多くの回答者が、休暇を取得することで、パンデミック下では不可能だった集中力を完全に取り戻すことができたと答えた。
また、バンブルのような企業では、バーンアウト対策として1週間の休暇を取った結果が良好だったことを受けて、今後もプログラムを強化する予定だ。
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本稿で紹介した介入措置は、私たちがパンデミックの最悪の状況を乗り越えようとしているいま、特に重要だ。いずれもバーンアウト、ストレス、不安など、世界中の労働者の間で慢性化しているメンタルヘルスの問題に対処するものである。
私たちは途切れることのない忙しさに追われ、生産的でない時間は自分の力を最大限に活かしていないと見なされるが、高いパフォーマンスを発揮するためには、根本から回復すためのリカバリー期間を定期的に持つことが必要になる。
こうしたバランスを取るための施策を実験的に行うことで、組織と従業員のウェルビーイングのために、今後も長期的に何らかの形で続けていきたいと思うものはどれかを見極めることができる。
"Don't Let Returning to the Office Burn Out Your Team," HBR.org, November 12, 2021.