(1)ロイヤルティを刺激する
報酬目当ての転職を防ぐためには、十分な賃金を払う必要がある。全般的な報酬体系の見直しに加えて、学生ローン返済の一部を肩代わりする、在宅勤務手当を付けるといった形で臨時ボーナスの支給も検討しよう。
この取り組みには、幼い子どもを持つ母親をはじめ、有色人種や女性の賃金格差を発見・是正する機会になるという付加的な効能もある。また、最近離職した元社員に長期的な報酬プランを提示して自社に呼び戻す「ブーメラン」を試みる企業もある。
(2)成長の機会を提供する
最高の部下が、いままさに辞表を提出したとしよう。どうしたら部下の決心を覆せるだろうか。
そんな時は、「この職場で理想の仕事をつくれるとしたら、どんな仕事をしたいか」と尋ね、それを実現する方法を模索しよう。先見の明のある組織は、何カ月も前からリテンションのための面談を行い、どのような状況なら残留するかを一人ひとりに尋ねている。
ボストン コンサルティング グループ(BCG)がまもなく発表する、従業員エンゲージメントに関する調査で、筆者らは「いまの仕事で自分のスキルが十分に活かされているか」という問いに前向きな回答をするかどうかが、会社へのエンゲージメントを測る重要な指標となることを発見した。
つまり大切なのは、従業員に成長と進化を遂げる新たな機会を提供することによって、「転職候補先の企業よりも自社のほうが、あなたを高く評価している」と伝えることだ。従業員はこうした「信任投票」に飢えている。筆者らの調査では、ブルーカラーかホワイトカラーかを問わず、世界の労働者の68%が再教育を受けて、新たなスキルを学びたいと答えている。
(3)パーパスを高める
パーパスとは、時代を超えて企業が存在する理由だ。人が組織に加わり、そこに留まる選択をするのもパーパスのためだ。筆者らの分析でも、激動の時代には平穏な時代以上に、組織が実現しようとする信念が重要になることが明らかになっている。
従業員に対して、自分たちの組織には単なる利潤追求を超えた意義があると示そう。その際、パーパスについて語るだけでは不十分で、あなたが何を、どう実行するかについても、パーパスを軸に組み立てる必要がある。