●信頼性
ここ2年あまりで、多くの労働者にとって柔軟性の優先順位が高まった。ただし、在宅勤務が広まり、基本的にうまく回っているにもかかわらず、多くのマネジャーが柔軟性と信頼性を混同している。
柔軟性(例:3-2-2のスケジュールで働く、毎週金曜日は休み、など)は予測可能なため、信頼性の低さ(例:直前に仕事をキャンセルする、タスクを完了できない、など)よりも管理しやすい。採用プロセスにおいて、応募者が柔軟性に関する希望を述べることは少なくないが、言うまでもなく、信頼性の問題をみずから明らかにはしないものだ。
そこでまず、採用時のリファレンスチェックのスキルを向上させて、信頼性の低い応募者を選別できるようにする(応募者が申告した推薦者などの評価だけでなく、採用側も独自に情報を集める)。さらに、面接の質問を見直して、信頼性の手がかりになりそうな行動について聞くことも重要だ。たとえば、「想定外の出来事に直面した時、どのように対処したかを話してください」と尋ねよう。
誰でも予期せぬ事態に遭遇するものだが、一般に、適応力とレジリエンス(再起力)がある人は信頼性が高いだろう。応募者が信頼できそうで、柔軟性に関する応募者の希望にチームのワークフローが対応できそうなら、採用に向けて検討を続ける。そう思えない場合は、応募者が何かを要求したり重大な失敗をしたりした時に、マネジャーであるあなたが周囲の従業員に謝罪し助けを求めるために、どれだけの時間を費やす覚悟があるかを考えよう。
クライアントを基盤とする職業(会計士、弁護士、コンサルタントなど)では、信頼性の低さがもたらす悪影響は特に深刻だ。信頼できる従業員が、信頼できない同僚の仕事を手伝おうとする時には、まずそれぞれのクライアントに関する情報を把握しなければならない。
ある中規模の企業で、新しく採用された会計士がクライアントの第3四半期決算の期限に数件、間に合わなかったと明かし、それでも長めのクリスマス休暇が必要だとほのめかした。マネジャーは他の会計士に連絡を取り、新しい会計士のクライアントの状況を十分に理解したうえで、自分たちのクライアントの分に加えて月次や年末の決算を正確にまとめてほしいと頼んだが、士気が上がることはなかった。
●ジョブ・レディネス
新しく採用された従業員にとって、求められている力量で確実に仕事をこなす能力は、言うまでもなく重要である。とはいえ、仕事が過重になるようなら、最小限のトレーニングが必要な場合は特に、多少の手助けはしたほうがいいだろう。
ただし、そのようなトレーニングには費用と時間がかかる。高度なOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)が必要なポストは、他の従業員が新人の学習を手伝って、ミスをカバーするために時間とエネルギーを費やすことになり、彼らに負担が生じる。
タスクに特化したスキル以外にも、成長マインドセットを持つ候補者を探そう。成長マインドセットを持つ人は、知識や能力は努力で伸ばすことができると考える。このマインドセットは調査票や面接の質問でも評価できる。たとえば、「これまでにうまくいかなかった状況を説明してください。明日また、その状況に直面したら、前回とは違う対応をしますか」と尋ねる。