●ポジティブな姿勢

 感情は細菌のように伝染する。1人のネガティブな人が周囲に「感染」させて、チーム全体が落ち込み、ただでさえ多い仕事量がさらに増える。

 苦手な人を避けるために、多くの人が自分のワークフローを実際に変えてしまうことさえある。そのために、さまざまな調整のコストが追加で必要となり、周囲の支援や業務を超えた役割をこなすといった行動が減少する。

 たとえば、喜んで委員会に参加し、休憩室の整理整頓を手伝っていた従業員が、急に忙しくなったり、自分専用のコーヒーマシンを持ち込んだりするようになる。従業員が本人の裁量に委ねられるタスクを行わなくなると、その影響が周囲にも連鎖して、結果的に仕事の達成率が下がり、不満が募る。

 ●よいコミュニケーション

 同僚とうまくコミュニケーションを取れることは、どのような職場環境でも重要だ。なかでも、バーチャルなチームでは頻繁なコミュニケーション信頼関係の重要性が高く、ネガティブなメンバーが及ぼす影響が増幅される。

 メンバー同士が物理的に離れていると、「隠れる」ことが簡単になり、「探す」ことが難しくなる。自分のオフィスの入り口に立っている人を無視するより、メールを無視するほうがはるかに簡単だ。エンジニアや科学者、デザイン思考の実践者など、異なる専門分野のプロフェッショナルがバーチャルで協力しなければならないプロジェクトでは、気難しい人がいるとチーム全体が脱線しかねない。

 基本的なコミュニケーション能力は、面接の際の受け答えの明確さや一貫性など、さまざまな要素を見て評価できる。好きなコミュニケーション手段や、効果的なコミュニケーションを取るコツを質問するのもよい。バーチャルに働くチームでの採用を検討している候補者が、メールを嫌い、午後4時半以降は連絡を取らないことがコミュニケーションの最大の秘訣だと考えているなら、別の人を探したほうが賢明かもしれない。

人員不足のチームをサポートする

 いまのところ採用しようと思う人材がいない場合、候補者が見つかるまでどうすればよいだろうか。

 まず、従業員に、現在の状況は一時的なもので、彼らのためによい同僚を雇おうと努力していることを伝える。多くの人は採用の失敗に長いあいだ悩まされるより、数週間少し余分に働くほうがいいと思うだろう。従業員自身が候補者を紹介するリファラルプログラムを利用して、採用に協力を求めることも検討できるかもしれない。

 働き続けることを選んだ従業員への配慮も重要だ。燃え尽きへの対処や、リテンション(定着)を高めるための戦略を考える。いま働いている従業員に対する敬意、配慮、報酬、そしてエンゲージメントが必要なのだ。入社時に高額のサイニングボーナスが提供される仕事が増えている中、隣の芝生は「青くない」と言われないような努力が肝心だ。

 適切な「誰か」を見つけるまで時間がかかりそうなら、チームのプレッシャーを軽減するために、別のポジションで人を採ることも検討する。たとえば、適任の副料理長が見つからなければ、ひとまずラインクックや皿洗い係、エクスペダイターを雇うという手もある。

 専門的なサポートスタッフは、医療(医師をサポートするメディカルスクライブ)や高等教育(教授をサポートするティーチングアシスタント)の現場では一般的だが、今後は分野を広げる必要があるかもしれない。知識労働者は、価値の低い仕事を切り離したり、誰かに委ねたりすることによって、生産性を20%上げることができる。

 いまの時代は、求めている人材が本当に「人」材でなければならないのか、あらためて考える絶好の機会でもある。倉庫工場レストランでロボットが利用されているだけでなく、人工知能の進歩によって、機械と知識労働者の新しい形のコラボレーションが可能になっている。

 信頼できて、成長マインドセットを持ち、前向きで、適切なコミュニケーションスキルがある応募者がいない時は、それでも誰かを雇うより、少なくとも短期的には、誰も雇わないほうが望ましいだろう。採用が決まるまで現在の従業員をどのようにサポートするか、別のポジションを補充するほうがよいのかを検討しよう。


"When Hiring Nobody Is Better Than Hiring Just Anybody," HBR.org, December 06, 2021.