まだ様子見をしている企業にとって、大事なのは個々のブランドに適した場を見つけ、リスクとリターンのバランスを取ることだ。そのためには何が可能なのかを把握する必要があり、早々に参入している他社をアイデア源および試金石にすることができる。

 たとえば、メタバースのゲーム要素をフル活用し、実質的にバーチャルで没入型のスポンサーシップを通じて、ブランド体験を提供する企業は少なくない。

 ナイキは大いに確立されたブランドだが、メタバースの積極的な活用において、間違いなく先頭に立っている。CNBCの報道によれば、同社はバーチャルグッズとそれらを販売するバーチャルな販売環境の構築に関する特許を申請している。さらに最近、メタバース向けにバーチャルのスニーカーとコレクショングッズを制作するアーティファクト(RTFKT)という会社を買収した

 メタバースの商業利用をさらに後押ししているのは、ソーシャル体験を通じて製品・サービスを直接購入する「ソーシャルコマース」とも呼ばれる新たな行動様式だ。米国のeコマースにおけるソーシャルコマースの割合は徐々に増加し、2021年だけでも360億ドルと予測され、中国などで見られる成長パターンを踏襲している。

 これに応じてソーシャルメディア環境では、従来型のインターネット環境だけでなく、3Dの没入型メタバースでも交流と購入の交差点を活用しようという強い意欲が見られる。バーチャルのショールームやファッションショーや試着室は、付随的な実験から大々的な普及に転じる可能性がにわかに高まっている。

 そして、人々が販売するのは物理的な物品だけではなくなった。実際にサザビーズは最近、独自のメタバースギャラリーを発表した。そのギャラリーはディセントラランド内に設けられ、キュレーションされたバーチャルアートを収蔵する。

 インフルエンサーのための新たなビジネスモデル、NFT(非代替性トークン。ブロックチェーン上で取引され保護される唯一無二の創作物だ)を含むバーチャルグッズ、そしてバーチャル世界で購入された物理的な物品の取引――これらはすべて、メタバースの機能が拡大するにつれ重要性が高まっていくだろう。

 ブランドは、常に「試して学ぶ」姿勢でいるべきだ。そしてデジタル環境では特に、知的好奇心が求められる。人間がつながりの構築、コミュニケーション、取引を行うためにインターネットをどう使うのかという点で、メタバースは次世代のイテレーションになる可能性を秘めている。あまりに長く傍観を続けることは、おそらく許されないだろう。

 現時点でブランドが実行できることを、以下に挙げよう。