●ターゲットを選ぶ
ターゲットとなるユーザーや顧客がどれほどの時間をメタバースで費やしているかを考慮し、相応に取り組みのスピードを調整しよう。たとえば、若年層に重点を置くブランドであれば、長い間メタバースに参加せずにいられる余裕はおそらくない。自社のターゲット層は誰か。既存客と見込み客に見られる現在の行動様式の中で、どれがメタバース参入のタイミングの指針となるだろうか。
●競争を注視する
メタバースにおける同業他社の動向について、議論を始めよう。幹部らの間で会話を促すために、幹部会議で事例を紹介するなどでもよい。そのような場はたいてい萎縮するかもしれない。NFTやブロックチェーンのように、理解不能にも思える概念を伴う場合はなおさらだ。これらのトピックについて、毎回の会議でわかりやすく具体的な事例を挙げる推進者を設けることはできるだろうか。
●用途を探す
メタバースは自社にとって、新しいことに挑戦する機会となるのか、そして自社のパーパスや長期目標を後押しするのか。その両方を見極めよう。メタバースの用途の多くは、サステナビリティに適している。
ほとんどすべてのCMOは、サステナビリティ関連のESG(環境、社会、ガバナンス)の取り組みをすでに公約しているか、あるいはまもなく公約することになり、それらが測定可能になる日も近い。顧客に対してよりサステナブルにサービスを提供する方法を試すために、メタバースでどのような試験的取り組みができるだろうか。
●参入計画を立てる
自社のブランドはメタバースにどのように参入すべきか、どのタイミングが適しているかについて、エージェンシーのチームに意見の形成を始めてもらおう。持ち株会社と独立系エージェンシーのいずれも、マスメディアの動向と最新のトレンドをつぶさに観察している。彼らの顧客ポートフォリオの間でどのような傾向が見られるか、この機会にぜひ尋ねてみよう。ブランドを適切な形でメタバースに露出させるために、彼らはいかなるテストを導入できるだろうか。
●リスクとリターンのバランスを保つ
自社がすでに参入済みの場合は、すべての新領域にリスクとリターンがあるという事実に備えよう。極めて不確実で、標準が確立されていないことを承知のうえで、しかるべき対応をする必要がある。
幸いなことに、昨今のパンデミックにより、誰もが以前よりもはるかにアジャイルになった。当たり前の事実をいえば、実験には失敗がつきものである。セカンドライフは何年も前、メタバースの有望性を示しながらも定着しなかった。しかし、そこに参加したブランドのリスクは深刻でも長期的でもなかった。したがって、いまがよきタイミングであれば、どう参入するかを検討することが大事だ。
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最も重要な点として、ブランドマーケティングの担当者や経営陣は、自社の創造性とストーリーテリングをどのように発揮するかを考え始めなければならない。メタバースで創造性の幅が広がるならば、カスタマージャーニーのどの時点でも――顧客の獲得、エンゲージメント、取引処理、カスタマーサポートまで――以前よりも優れた、粘着性の高い体験を創出することが楽しみになるはずだ。
そしていつの日か、私たちはリアルからバーチャルの世界へとシームレスに移動したいと思うようになるだろう。それこそが、次なるフロンティアである。
※本稿の見解は筆者のものであり、アーンスト・アンド・ヤングLLPや、EYのグローバル組織に属する他のメンバーファームの見解を必ずしも反映するものではない。
"How Brands Can Enter the Metaverse," HBR.org, January 03, 2022.