
会議を効率的に進めるための方法論は世の中にあふれているが、重大なポイントが見落とされがちだ。それは、リーダーが果たすべき役割についてである。リーダーが会議前にいかなる準備を行い、会議中にどのようなコミュニケーションを取るかに、会議の成否はかかっている。本稿では、ミッションを達成するうえで有効な10の戦術を紹介する。
集まる場所が会議室であれズーム上であれ、会議を効率的に進めるさまざまな秘訣については、すでに広く理解されている。会議の開始時間と終了時間を守る、効率的なアジェンダを設定する、役割を明確にする、ミュートにしていることを忘れない、といったものだ。基本的なコツを知らない場合でも、グーグルで検索すればすぐに出てくる。
ただし、最も価値が高いコツは、最も知られていないものかもしれない。なぜなら、それは会議の構成や参加者に関するものでもなければ、アジェンダに関するものでさえないからだ。最も価値ある秘訣とは、会議のリーダーが会議前にいかなる準備を行い、会議中にどのようなコミュニケーションを取るかについて、である。
ほぼどのようなプロジェクトにおいても、会議の成功はリーダーによるコミュニケーションの成否にかかっている。以下に紹介する10のコミュニケーション戦術を活用することで、会議のリーダーも、出席するエグゼクティブも、会議のミッションを達成できるはずだ。
1. アジェンダだけでなく、要点をあらかじめ用意しておく
アジェンダは会議のロードマップとしては有益だが、カギとなる要点を伝えるツールとしては効果的ではない。そこで、アジェンダを作成するだけでなく、簡潔だが価値の高い要点を事前にいくつか考え、用意しておこう。
要点をまとめる際は、次のように自問するといい。
・「この会議で、私はどんなアイデアを伝えたいのか」
・「どんなチャレンジについて私、あるいは私たちは助けを必要としているか」
・「称賛や言及に値するのは誰か」
・「このグループで最も議論し、検討してほしい問いは何か」
これらの問いへの答えを会議に持参し、冒頭で、あるいは関連するトピックが出た時に共有する。トピックは「一枚の紙」であり、要点は「紙飛行機」だ。どちらも机の上に置いておけるが、考えを伝えられるのは一方だけ、という点を忘れずに。
2. 目的を提示する
会議の冒頭で、会議の目的──決定すべきこと、検討すべきこと、あるいは会議の結果として達成すべきこと──を共有しよう。「課題を探る」「課題に取り組む」といった曖昧な目的は回避すべきだ。それでは会話をするだけで、行動や進展は望めない(ズームであっても、単なる会話にはあまり価値はない)。会議の冒頭で目的を明確に伝えることで、会議終了時までに確実に目的を達せられるか、少なくとも確認できるはずだ。
3. 聞き手を誘導する
リーダーは会議の冒頭で挨拶や感想、重要なアップデート情報など伝えることが多いし、そうすべきでもある。
冒頭の発言がいくつものトピックに及ぶ場合は、その内容を予告しよう。「会議を始める前に、先週の業績予想の発表とDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)に関する社内調査の結果、そして近々チームに加わる予定の新メンバーについて簡単に話をしたいと思います」
また、次の話題への移行表現(「2つ目に提案したいのはYです」)や、まとめの言葉(「ご覧のように、我々の成功にはXとY、そしてZが重要です」)も活用しよう。
このような「予告・移行・まとめ」の型をつくることで、チームのメンバーは、(1)この後に何が来るかを知り、(2)あなたの話についていき、(3)重要な結論を理解することができる。