DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(DHBR)編集部がいま注力している分野に動画があります。最近、マイクロソフトのサティア・ナデラ会長兼CEO がHBRのインタビューに応えた翻訳動画を配信しました。また、DHBRの最新号(2022年3月号)の特集テーマは「『働きやすさ』のマネジメント」です。ナデラ氏の言葉から「働きやすさ」の意味を考え直します。
マイクロソフトCEOが示す
働き方を変えるメガトレンド
マイクロソフトのサティア・ナデラ会長兼CEOが「The New World of Work」(仕事の新世界)をテーマにHBRのインタビューに答え、DHBRでも「マイクロソフトCEOサティア・ナデラが仕事の未来を語る」と題して、その翻訳動画を公開しました。
ナデラ氏はまず、コロナ禍において大きな構造変化が起きていると指摘し、2つのメガトレンドを紹介します。1つ目がハイブリッドワークを取り巻くトレンドです。いつ、どこで、どのように働くのか。柔軟な働き方を求めて、人々の期待が大きく変化しています。
2つ目は、「グレート・リシャッフル」(大改造)です。いつ、どこで、どのように働くかだけでなく、人々は「なぜ働くのか」についても深く考え始めています。自分が本当に働きたい会社はどこか、どのような職務に就きたいのか等、仕事の本当の意味を問い直そうとしています。実際、米国を中心に人材の流動化が加速しており、グレート・レジグネーション(大退職時代)とも呼ばれています。
これらの流れが「私たちの働き方を根本的かつ構造的に変えている」とナデラ氏は強調します。ですが、ここには矛盾があるそうです。マイクロソフトが約3万人に行った調査では、73%が「リモートワークを活用した柔軟な働き方」を求める一方で、67%が「コロナ後はより多くの対面でのコラボレーション」を望んでいました。リモートワークの利便性と対面の良さを同時に評価していたのです。
ナデラ氏はこの状況を「ハイブリッドワークパラドクス」と呼び、「要するに、いまは決めつけないことが賢明でしょう。新しい規範がまだ定着していませんし、それが定着して初めて本当の因果関係がわかります。そうすれば生産性の柔軟さについて、大まかな輪郭も理解できるようになるでしょう」と語ります。
会社に見切りをつける人はいない
マネジャーに愛想を尽かして辞める
そのような状況なので勤務体制一つをとっても会社の判断軸が揺らいでいます。ですが、従業員は待ってくれません。会社と自分の関係はどうなのか、部署の同僚や上司との関係はどうか、会社は期待に応えてくれるのか等、関係性の再評価を始めています。
ナデラ氏は、"Nobody quits companies. They quit managers."(「会社に見切りをつける人はいない、マネジャーに愛想を尽かして辞めるのだ」)という言葉を紹介し、マネジメントを変える重要性を訴えかけます。
「誰もが生きいきとする経験や文化とは何かについて、会社のミッションと個人のミッションや人生観とのつながりについて、私たちは真剣に考えなければなりません」。
さて、2022年3月号の特集は「『働きやすさ』のマネジメント」です。詳細については「従業員と企業の双方にメリットがある『働きやすさ』とは何か」の記事に譲りますが、従業員の期待が大きく変化する中、ただそれに応えるだけでは経営は成り立ちません。
会社として生産性を高め、従業員と会社の双方にメリットが生まれる「働きやすさ」を追求する必要があります。その考え方のフレームワークやヒントが詰まっています。ナデラ氏の言葉を思い浮かべながら、ぜひご一読いただければ幸いです。
(編集長・小島健志)