
妊娠中の従業員に対する差別は法律で禁止されていても、実際には妊娠を理由に不利な扱いを受ける例が少なくない。問題は、給与や昇進機会、社会資本の減少といったキャリアに対する影響のみならず、妊娠差別により母体にかかるストレスが増し、新生児に対しても悪影響を及ぼしかねないことだ。特に母体に対する影響は長期的なものであり、産後うつのリスクを高めることが明らかになっている。本稿では、マネジャーが職場における妊娠差別を防ぎ、妊娠した従業員をサポートするために、科学的根拠がある5つの方法を紹介する。
職場の妊娠差別を禁止する法律はあるが、依然として差別は頻繁に発生している。実際、米国では過去5年間、妊娠を理由に不当な扱いを受けたとする訴えが約1万5000件起こされている。
妊娠差別は、妊娠中の従業員のキャリアに現実的な影響(給与や昇進機会、社会資本の減少)を及ぼす可能性があることが知られている。その一方で、まだ答えが明らかになっていない問題がある。従業員や新生児の健康に影響があるかどうかだ。
この問いの答えを探るために、筆者らは妊婦の職場体験、そして本人と新生児の健康に対する影響を検証する2つの研究を実施した。その結果、妊娠差別を受けると母体にかかるストレスが増し、それが産後うつのリスクを高めていることが明らかになった。また、出生児体重の低下や妊娠期間の縮小、さらに生後数週間における診察回数の増加にもつながっていた。
妊娠差別が妊娠中の従業員にネガティブな影響を与えることは明白だと思われるが、それが新生児にも間接的な影響を与えることがわかったのは筆者らも驚きだった。これは職場差別の幅広い影響を示すとともに、その問題に対処する重要性を強く示している。
筆者らは最近、同じ従業員を対象にフォローアップ調査を行い、出生後数年以内に、新生児の状況が持ち直すことがわかった。つまり、母親が妊娠中に経験した差別やストレスから生じた悪影響が消えていたのだ。
しかし、母親は依然として、身体の不調やうつ症状、そして子育てのストレスに苦しんでいた。すなわち、妊娠差別は母親の健康に長期的な影響を及ぼす能性があることが、筆者らの研究で明らかになったのだ。
職場における妊娠差別を防止するには、組織やマネジャーが具体的な行動を起こすことが欠かせない。彼らがよりポジティブな組織環境の構築を促進し、科学的根拠がある以下の5つの方法を実行することで、妊娠中の従業員をサポートすることができる。