●子育て支援の交渉をサポートする

 マネジャーは、妊娠中の従業員が仕事面で必要なサポートを提供することで、妊娠期間中のストレスを低減できるユニークな立場にある。

 従業員が妊娠した場合、一般に妊娠初期(第1期)が過ぎた時点で職場に公表することが多い。マネジャーは、その最初の報告相手となる可能性が高い。したがって、マネジャーの最初の反応がその後の待遇に関する印象を左右し、妊娠中の従業員が受けるストレスに影響を与える。

 従業員から妊娠の報告を受けた時、協力的な姿勢で応じることは重要であり、マネジャーが会社の支援制度を事前に把握していることは特に助けになる。米国では、連邦法に育児休暇の定めがないため、支援内容は組織により大きく異なる。マネジャーは、妊娠中の従業員が会社で利用可能なあらゆるリソースを使うための支援ができる、ユニークな立場にあるのだ。

 さらに、従業員の妊娠期間を通じて、本人がどのような種類のサポートを必要としているのか、マネジャーが従業員と率直な対話を持ち続けることが重要だ。マネジャーがよかれと思って、妊娠中の従業員の仕事量を減らそうとする場合があるが、それが本人の希望とは限らない。仕事量が減れば、収入源の影響で意図せぬストレスが生じるだけでなく、それを屈辱だ、あるいは差別だと受け止める従業員がいるかもしれない。

 率直な対話を持つと、従業員は自分のニーズを伝えることができ、マネジャーも従業員が支援制度を利用するための擁護者になることができる。

 ●柔軟な働き方を選択できるようにする

 マネジャーは、リモートワークやフレックスタイム制などフレキシブルワークを提案することで、妊娠した従業員をサポートすることができる。

 そのような選択肢はウィン・ウィンだ。なぜなら、従業員は仕事と仕事以外の責任の両方に対処しやすくなり、ストレスが軽減するだけでなく、優れたパフォーマンスにつながるからだ。たとえば、リモートワークであれば、従業員が妊娠関連の症状や疾患を抱えている場合も、仕事の要求に応えることが可能になる。

 しかし、妊娠中の従業員は、自分がフレキシブルワークを選択すると、周囲から「仕事に本気で取り組んでいない」と思われるのではないか、あるいはキャリア上、何らかの不利益を被るのではないかと懸念し、利用をためらうかもしれない。その際、マネジャーは、フレキシブルワークは一部の特権ではなく、誰もが行使できる権利だというマインドセットを根付かせるキーパーソンになる。

 加えて、マネジャーは会社のリソースを利用して、自分の私生活と仕事上のニーズを満たし、健全なワークライフバランスの模範を示すことで、従業員がそのようなリソースが利用可能であると示すだけでなく、実際の利用が奨励されているというシグナルを送ることができる。

 ●通院のために仕事を抜けることを認める

 妊娠中は、定期的に妊婦健診を受ける必要がある。しかも、その頻度は段々と高まっていく。妊婦健診は、妊娠28週までは月1回以上、それ以降36週までは2週間に1回となる。そして出産前の4週間、妊娠36~40週は通常、毎週受診する。健康上の問題を抱えている人や、高齢出産や多胎妊娠など追加的な配慮が必要な人については、妊婦健診の回数がさらに増える可能性がある。

 定期的な妊婦健診のほかにも、妊娠中の従業員は複数のクリニックを受診しなければならないことが多い。妊娠は、健康のあらゆる側面に影響を与えるからだ。たとえば、歯科治療、栄養、睡眠のニーズは、妊娠期間中に変化していく。妊娠中の従業員が通院する場合、早退や遅刻、ないしはリモートワークを認めることが、新生児と従業員の健康にとって極めて重要となる。