●同僚との交流を促進する
著者の数名が最近発表した別の研究では、妊娠中の従業員が健康とウェルビーイングを維持するために、事業者がすぐに実践できる戦略があることが明らかになった。具体的には、同僚や上司の協力的な行動が妊婦中の従業員のストレスを低減するうえで大きな役割を果たすことが、データによって示されたのだ。
この研究の一環として、筆者らは妊娠中の従業員に、日常生活で経験したストレスと社会的サポートを報告してもらった。その結果、同僚と上司のどちらからもサポートされていると感じる従業員は、妊娠中のストレスが最も小さいことが明らかになった。さらに、産後うつの長期的減少や出産後の迅速な体力回復と関連していることがわかっている。
妊娠中に社会的サポートを得られると、その従業員はメンタルヘルスを最良の状態に維持できることから、出産前後に同僚との支援的交流をうながすことが極めて重要になる。マネジャーは妊娠中の従業員に、就業時間中およびその前後の時間帯に、従業員同士が社交の場を持てるようにどう支援できるかを尋ねることが必要だ。たとえば、コーヒー休憩を設けるのがよいか、メンターをつけるのがよいか、従業員リソースグループ(ERG)をつくるのがよいか、実際に聞いてみる。
また、妊娠中の従業員は出産・育児休暇で仕事を離れている間も、メールやズーム会議を通じて、同僚や上司と何らかのつながりを持ち続けたいと思うかもしれない。マネジャーにとって重要なのは、常に妊娠中の従業員の意向に沿うことだ。
社会的相互作用を持つことが疲れると感じる人もいれば、必要不可欠だと感じる人もいる。社交の機会について、妊娠中の従業員に複数の異なる選択肢を提示すれば、彼女らのニーズや働き方の柔軟性に配慮していることを具体的な形で示すことができる。さらに、職場での社会的つながりが強いと、すべての従業員が恩恵を得られる。
●インクルーシブな組織文化を意図的につくる
インクルーシブな行動は、ジェンダーや健康状態、妊娠などの相違にかかわらず、すべての従業員が歓迎され、大切にされていることを示すシグナルになる。そうすれば、あらゆるアイデンティティを持つ従業員が活躍できる可能性を、さらに高めることができるはずだ。
研究によれば、インクルーシブリーダーは心理的安全性を高めて、チームがメンバー間の相違を効果的に管理しやすくなることが示されている。カタリストの最近の報告書によれば、従業員のインクルージョン体験は、マネジャーのインクルーシブリーダーとしての行動と直接結び付いている。
マネジャーは、妊娠中の従業員の職場体験について意識的に質問したり、彼女らが言わざるをえない意見に積極的に耳を傾けたりすることにより、インクルーシブな組織文化を構築することができる。
また、妊娠中の従業員の体験に共感を示し、排他的と思しき慣習を見つけた時には、その是正に注力しなくてはならない。たとえば、バイアスのある振る舞いを後押しするような行動があれば、積極的に途絶したり、インクルーシブな行動の模範を示したりできるだろう。
インクルーシブな組織文化をつくることは、妊娠中の従業員の心理的安全性を育み、それを維持するために欠かせないものだ。
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職場の妊娠差別は違法だが、依然として起きている。筆者らの調査では、それは妊娠中の従業員と新生児に深刻な影響を及ぼす可能性があることが示された。
働く女性の約85%がキャリアのいずれかの段階で妊娠することを考えると、マネジャーが妊娠差別の問題に正面から対処することをお勧めしたい。マネジャーは何より、妊娠中の従業員がどのようなサポートを必要としているのか、彼女らと率直な対話を持ち続ける努力をすべきだ。
編注:本稿執筆にあたり、パメラ L. ペレウェ、アシュリー・マンデビル、エイジア・イートン、リリア M. コルティーナ、インゲ・リーの協力を得た。
"5 Ways Managers Can Support Pregnant Employees," HBR.org, January 12, 2022.