ビジネスの世界がソフトウェアを中心とした変化を遂げる中、自社がどのような製品・サービスを提供するかにかかわらず、組織のアジャイル化が強く求められている。しかし実際には、製品開発に携わるチームはアジャイルでも、それ以外の部門では従来のやり方がまかり通る場合が少なくない。しかし、HRや財務のように組織のインフラともいうべき領域こそアジャイル化し、ソフトウェア主導のビジネスをサポートする基盤となるべきだ。本稿では、組織全体が本当の意味でアジャイル化するに何をすべきかを論じる。


 ソフトウェアが世界を飲み込んだ。そして、新しく多様な産業を吸収し続けるうちに、ビジネスのやり方まで変えてしまった。いまや、誰もが「ソフトウェアビジネス」の中にいて、自分たちがどのような製品・サービスを提供するかにかかわらず、組織を構築し管理する方法の見直しを迫られている。

 筆者がマネジャーに、組織レベルで「アジャイル」を実践しているかと尋ねると、ほとんどは「イエス」と答える。しかし少し掘り下げてみると、アジャイルなのは製品開発チームだけ、それもソフトウェアエンジニアリングの領域に限定されていることが多く、それ以外の部門はアジャイルでないことがほとんどだ。

「HR部門のアジリティア」あるいは「財務部門の継続的改善」に言及されることは、ほぼない。だが、組織のインフラともいうべきこのような領域こそ、アジャイル化を進め、ソフトウェア主導のビジネスをサポートする基盤にならなくてはいけない。

 ソフトウェアの特性が継続的デリバリーに向けて変化し続けているように、市場と対話する方法についても新たな形式を生み出すことができる。すなわち、市場との継続的対話である。

 私たちはプロダクトを展開後、観察、評価、インタビュー、学習、そして最適化のサイクルを、数カ月ではなく数時間のうちに行う。そして意思決定は即座に行われ、指示は一夜にして切り替わる。

 このような迅速なイテレーションを最適化するには、人材を配置し、資金を投入して、管理し、従業員に報酬を与える内部組織が、同じレベルでアジャイルになる必要がある。経営層が「これまでのやり方」を踏襲していたのでは、現場の実行チームが持つ潜在的可能性を阻害してしまうのだ。