楽観的な要因もある

(1)安全性の向上

 従業員が自動化を楽観視する要因として最も多かったのは(肯定的な回答の42%で言及)、安全性が向上する可能性だ。多くのケースで、身体の消耗を減らすという点での安全性について言及された。

 フランスの世界的な物流会社でフォークリフトの運転手を務めるヤニスは、こう語った。「激しい腰痛のために、何度か病欠をしたことがあります。自動化されたフォークリフト車のおかげで、自分の身体的健康を維持するうえで最も重要な問題が改善しました」

 加えて、職場を消毒するよう設計された自動化ツールは、パンデミックの渦中では特に必須であり、対面での仕事を伴う従業員間での新型コロナウイルスの感染拡大を防いでいる。

 ミシガンの小売チェーンで在庫管理を担当するラニーシャは、こう強調した。「ボタンを1回押すだけで、清掃ロボットが一晩中フロアを掃除して回り、すべてをきれいに拭いてくれた」ため、倉庫はより安全になっているという。

(2)スピードと効率の向上

 経営幹部はしばしば自動化を通じた高度な効率性の向上を誇示するが、自動化ツールの導入によって実現したスピードと効率を好ましく考えているのは、現場の作業員と監督者も同様であることがわかり、筆者らは勇気づけられた。

 肯定的な回答の38%は、この分類に該当した。作業をより速く効率的に行う後押しとなるテクノロジーについて、従業員は強い関心を示している。

 英国の多国籍食品メーカーで倉庫作業員を務めるスティーブは、「ロボットは倉庫を飛躍的に効率化させた」とコメントした。フランスの食料品卸売会社でマテリアルハンドラーを務めるアランの指摘では、「生産性の面でいえば、10倍ほど向上した」という。

 中国の鋳造設備メーカーで梱包係を務めるリリンは、こう説明した。「ロボットは何トンもの貨物を簡単に持ち上げます。おかげで従業員は、機械の操作や在庫の管理といった、より負担の少ない作業ができています」

 監督者らも同様に、効率向上の可能性に大いに期待している。英国で倉庫の監督者を務めるイアン曰く、「自動化ソフトウェアのおかげで、私の仕事は楽になっています。(一部の作業については)人間ではなくロボットを使うほうが、効率がよいからです」

(3)仕事の質の向上

 最後に、肯定的な回答のうち残りの20%は、自動化ツールによる支援で従業員の仕事の質がいかに向上したかに焦点を当てている。

 自動化による業務向上への楽観が見られた分野の一つは、顧客体験だ。まだ自動化への投資が行われていない中国の倉庫で働く某監督者は、多くの顧客から「仕分けのミスと、賞味期限切れの食品の出荷」に関するクレームを受けていると嘆いた。今後はこのようなクレームの解消に向けて、会社がすぐにでも自動化設備に投資することを彼は期待しているという。

 フロリダの多国籍家電小売企業で倉庫のオペレーターを務めるアリオナも、在庫点検の工程でミスがいかに減ったかを語った。「この仕事のシステムでは、人間によるエラーが多々発生します。精度の向上につながるテクノロジーを取り入れるのは、素晴らしいことです」

 また、自動化ツールによって個々の作業の質が向上しただけでなく、より興味深い仕事に時間を費やす余裕ができ、モチベーションとエンゲージメントが高まったと感じている従業員は多い。

 一例として、フランスで監督者を務めるティエリは、自動化が彼にもたらした変化を語った。「(いまでは)技術的問題が生じた時だけ介入します。自分が果たす役割をより興味深く感じ、反復的な要素が減りました」。英国で監督者を務めるアンドリューは、自動化によって「監督すべきことが減ったため、他の作業に集中できるようになった」という。

 フランスで倉庫作業に従事するファビアンも、「ロボットと一緒に働くことで、仕事がより面白くなった」ことにありがたみを感じている。「時間の節約にもなっています。情報を探しに行く必要がある時、すべてがロボットによってすでに統合され、要約されているからです」