自動化をめぐる従業員の懸念
(1)失業に対する不安
分析では、筆者らのモデルから「否定的な感情」と分類された回答のうち42%は、失業に対する不安と関連していた。
中国の2人の回答者、倉庫の梱包係のシンと監督者のチェンシは、まったく同じ言葉で不安を表現した。「この(ロボットを使うという)選択は、私たちを失業に追いやる原因となるかもしれません」
英国を拠点とする世界的な物流会社の倉庫で事務員を務めるヘザーは、自分の将来に思いを巡らせ、こうコメントした。「ロボットと一緒に働くことはかまわないのですが、自分の仕事がロボットに任されるようになっている、という感覚が時々あります」
自分自身の職については必ずしも不安を感じないという人でも、他の人々が生計手段を失うのではないかという懸念を表明した回答者は多い。
フランスの倉庫で梱包係を務めるサミは、こう説明した。「これからの世代が心配です。もう人間の倉庫係は必要とされないでしょうから。すべてがロボットによって行われるはずです。機械は懸命に働き、全自動で、不平も言わず、ストライキもしません」
英国で働く監督者のラムゼイも、同じように感じている。「よくないのは、非常に困難なこの時代に、機械が人々の仕事を消滅させるという事実です」
(2)訓練が不十分
次に多く示された懸念として、訓練リソースが不十分なために、新たにデジタル化された職場でうまくやっていく能力が低下するという不安がある。これは否定的な回答の35%を占めた。
マドリードの倉庫で監督者を務めるリカルドは、自動化に対する複雑な感情を次のように説明した。「倉庫の自動化が進めば進むほど、我々のパフォーマンスも向上します。ロボットは我々の作業負荷を大幅に少なくし、リスクも減らし、生産性を向上させます。ただし、扱い方を我々が理解していなければ、ロボットはほとんど役に立ちません」
中国のネットワーク技術会社で監督者を務めるカシンも、新しいツールの使い方を学ぶという点で、従業員の人口構成が課題になったという。「当社の現在の仕分け担当者は年配の人たちです。新しいスマート機器の操作を学ぶことは、彼らにとって修正と適応を要するプロセスです」
監督職ではない従業員も、同様の不安を口にしている。スペインで倉庫作業員として働くモンセラットにとって「最大の課題は、このコンピュータの機械全体がどう機能するかを理解すること、そしてロボットの正しい扱い方とプログラムコマンドの使い方を把握すること」だという。
米国のスポーツ用品会社の梱包係も、同様の思いを語った。「ロボットには慣れていないので、最初のうちは一緒に働くことにやや抵抗を感じると思います。神経が乱れそうで。でも、ロボットとやり取りをする方法と、運転停止の仕方など安全対策について、ひとたび正式な訓練を受ければ、もっと自信がついて楽になりそうです」
一部の従業員はこうも指摘した。リーダーは、「ほとんどの従業員は自動化ツールにある程度慣れているだろう」と思い込んでいるかもしれないが、必ずしもそうではない。フランスの倉庫で働くアクセルの説明によれば、「これらのロボットを操作するには、正しい使い方を学ぶ必要があります。車の運転以上の知識を私たちが持っているとは限らないからです」
(3)テクノロジーを信用できない
最後に、インタビューでは次の懸念も語られた。自動化ツールが故障した場合、従業員は問題を解決する手段を持たず、ゆえに適切な業務遂行が不可能になるという不安だ。訓練リソースが限られている場合は特に、不具合が生じると、従業員は問題への対処はおろか診断すらできず、無力感を覚えるかもしれない。
一例として、スペインの世界的な自動車メーカーで監督者を務めるエバは、こう説明した。「自動ロボットと一緒に働いている最中、部品が詰まったりロボットが動けなくなったりすると、困難に直面します。私たちが多くのプログラムについて学べるのは、エラーが起きた時だけです」
英国の大手小売企業で監督者を務めるコナーは、簡潔にこう表現した。システムがダウンして手作業が必要になると、仕事は「完全に苦痛」だという。
同様に、英国の建設機器メーカーでマテリアルハンドラー(物の移動や搬送を行う作業員)を務めるデイブはこう感じている。自動化技術は「間違いなく助けになる」が、問題が生じた時には「たいてい深刻な機能停止につながり」、その日が台無しになるという。
自動化ツールが故障すると、従業員は往々にして追加の手作業を迫られるか、技術者によって問題が解決されるのを待ちながら、時間を無駄にすることになる。