企業が学べる教訓

 倉庫オペレーションの自動化が、実質的かつプラスの影響を従業員にもたらす可能性を秘めているのは明白だ。ただし、マイナス面も伴う。筆者らは分析で明らかになった期待と懸念を踏まえ、雇用主が従業員への支援を強化しながら、自動化によるメリットを享受するための戦略をいくつか見出した。

 ●成長機会を強調する

 調査の中で従業員たちが述べた最大の不安は、自動化によって自分の職が失われる可能性だ。その不安と対照をなすのはもちろん、自動化によって従業員の仕事がより安全かつ有意義になりうるという期待である。

 不安に対処しながら、同時にプラス面を強調するには、雇用主は積極的に成長機会を拡大しなければならない(そして従業員に、それらの機会をうまく活かすために必要なツールと情報を必ず与える必要がある)。

 たとえば、一部の企業は新任の倉庫従業員に対し、役割を適切に果たせるよう支援して昇進の道を提供するために、訓練拠点を立ち上げている。重要なのは、これらの訓練プログラムでは単にリソースを提供するだけでなく、実際に成長が可能であると示すことだ。

 そのためには、従業員に参加を奨励するだけに留まってはならない。新任従業員のうち相当の割合が、最終的には実際にマネジメント職へと昇進し、現在の作業員にも同じようなキャリアが実現可能だと想定してもらえるよう、万全を期す必要がある。

 ●訓練を正しく行う

 インタビューではまた、安全に働くための訓練と、自動化ツールに問題が生じた時に、それを解決するための訓練に関する懸念も浮上した。

 残念ながら、善意ある雇用主の多くは、実効性のある訓練をなかなか提供できずにいる。特に苦労しているのは、自動化された倉庫で一般的に使われるようなロボットシステムの操作について、技術的専門知識をほとんど持たない新任者への訓練だ。

 作業員と監督者を自動化技術の扱いに慣れさせるには、訓練プログラムが単なる教則ビデオや講義に留まってはならない。機械の操作方法と故障時のリセット方法について、現場で実践的な練習とシミュレーションを提供する必要がある。

 たとえばフェデックスは、多数の倉庫従業員を訓練するために、VRシミュレーションとゲーミフィケーションを用いた訓練プログラムを活用している。これにより、従業員は荷物の積み降ろし場に足を踏み入れる前から、難しい作業を練習できる。これらのプログラムは従業員の安全と自信の両方を高めるために考案されており、同社では荷物を扱う作業員の離職率が大幅に減少した。

 ●安全への投資を継続する

 調査で従業員たちが挙げた自動化の最大の利点は、安全性を高める能力だ。ただし、新しいツールは安全な職場づくりに寄与しうるとはいえ、雇用主はさらなる安全性向上への投資をやめていいわけではない。

 支援ロボットは人間の身体的消耗を大幅に減らしてくれるが、すべてを解決するものではない。人間の従業員にはいまだに、持ち上げ作業やその他のきつい仕事をたくさんこなすことが期待される場合が多い。可能な限り安全かつ健全な職場を提供することは、雇用主の責任である。

 選択肢の一つは、技術的な方策を追加で推し進めていくことだ。一部の倉庫と製造施設は、動作補助のためのエクソスケルトン(外骨格スーツ)を従業員に提供し始め、身体損傷や過労のリスクを減らしている。最新のロボット・エクソスケルトンは、個々の装着者に合わせて調整するために人工知能まで活用し、従業員に別次元の支援をもたらしている。

 また、企業は従業員の動作データを記録するウェアラブルセンサーの活用も始めた。そのデータを基に、個人レベルでの怪我のリスクを診断し、安全性を高めるためにフィードバックと訓練を提供するのだ。

 同様のツールは、パンデミック下でソーシャルディスタンスの確保を助けるために応用されている。従業員同士が近づきすぎていることをセンサーが示し、警告を発する仕組みだ。

 しかし、高度なテクノロジーがなくても、従業員の健康と安全を高めるために、雇用主ができることはたくさんある。より単純な対策で同様の効果をもたらすことは可能だ。

 たとえば、倉庫の作業場に十分な数の清掃員を配置し、常に衛生的な職場となるよう徹底する、危険な機械の周りにわかりやすい標識を設けるなどだ。また、現場従業員とともに、安全上の懸念の発見とその対処に積極的に取り組むリーダーシップが促される仕組みを設けるなどの方法もある。

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 現在の倉庫業務はこれまで以上に、私たちのグローバル経済を支える背骨となっている。人々の生活を支えるために不可欠だが、従事者にとっては厳しい仕事かもしれない。自動化技術の導入が、新たな課題と不確実性を生んでいる状況ではなおさらだ。

 これらの技術はどのような形で大きなプラスの影響をもたらし、より安全で生産性が高く、有意義な職業体験の提供を可能にするのかが、筆者らの調査で明らかになった。同時に、従業員は深い懸念も抱いている。新しい自動化ツールによって、どのように職の安定が脅かされる可能性があるのか、そしてロボットの同僚と一緒に効果的かつ安全に働くうえで必要な訓練を受けられるかどうかが不安なのだ。

 組織は未来を見据える中で、従業員の不安に対処しながら、彼らが楽観できるようにしなければならない。この両方を実現するには、安全で生産的な職場と、本当の成長機会を提供できるような取り組みが必要である。


"Research: How Do Warehouse Workers Feel About Automation?," HBR.org, February 11, 2022.