たとえばポテンシアの場合、まず企業に人材の確保あるいは定着に苦労している職種を尋ね、そこから特定した職種のポジションを1つ(あるいはそれ以上)、ニューロダイバース人材のために確保してもらうように依頼する。
そして、その企業とパートナーシップを組み、適切な能力を備えるニューロダイバースな候補者を特定するプロセスと、応募者が自分のスキルをアピールできる採用プロセスを確立する。「なぜなら、私たちが仲介する応募者の多くは、伝統的な面接プロセスではうまくいかないことが多いからだ」と、ジェフ・ミラーCEOは言う。
同社の主力サービス「スペクトラム・トレーニング・リクルートメント・アンド・サポート」(STARS)は、企業側のオンボーティングや支援体制の構築を支援する。これには、ジョブコーチやメンターの手配、継続的なカウンセリング、そしてマネジャー向けのニューロダイバーシティ研修が含まれる。
このように構造化された支援プログラムは90日間、あるいは必要に応じて自律できるようになるまで提供される。また、社外でのサポートネットワーク構築が求められる場合もある。そのようなサポートネットワークには家族や友人が組み込まれる。
ポテンシアの現在のクライアントには、エネルギー大手のシェブロンやベーカーヒューズをはじめ、プログラム開発でさまざまな段階にある大手事業者が含まれる。最初の仲介先はIT関連職がほとんどだが、非テクノロジー職にも受け入れてもらえるように、CEOのミラーは企業に活用を促している。
同社が2021年に仲介したニューロダイバース人材は12人を超えるが、2022年はその3倍以上を仲介できると考えている。「少しずつ前進している。企業と適切なパートナーシップを構築するには数カ月、場合によっては数年かかることもある」と、ミラーは筆者に語った。
ザビコンの場合も、ポテンシアと同じようなプロトコルを採用している。すなわち、スキルをアピールできるような代替的な面接、企業向けのニューロダイバーシティ研修、そして社内外における支援の提供である。ポテンシアと同様に、構造化され意図的な施策を通じて、企業がニューロダイバース人材から最大の恩恵を得られるようなバリュープロポジションを構築している。
ザビコンが活用しているのが、人材業界のビジネスモデルだ。ニューロダイバース人材の登録リストを作成し、企業が人材確保に苦労している職種を埋めるのを助け、企業から仲介料を受け取る仕組みだ。さらに、個々の企業に合わせた研修や従業員支援プログラムも提供している。
ニューロタレント・ワークスも、ニューロダイバース人材を個別に仲介し、顧客企業がより広範に取り組みを進めているニューロダイバーシティ採用イニシアティブの一環として行うことにしている。
「サポートと研修の具体的な内容は、個々の会社とニューロダイバース人材によって異なる。そうしなければ、従業員にとっても事業者にとっても、個別仲介は成功しないことが多い」と、ニューロタレント・ワークスの共同創業者でエグゼクティブディレクターを務めるジェシカ・リーは語る。同社は顧客企業を着実に増やしており、現在は30社近くのクライアントを持つ。
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神経発達の多様性を持つ成人の就業率を上昇させるには、今後何年もさまざまな戦略を講じていく必要がある。独自の採用プログラムを構築できる企業もあれば、仲介会社を戦略的パートナーとして、人口動態の変化や経済社会からの要求に応えるべく、ニューロダイバース人材の就業拡大に対処する企業もあるだろう。
いずれにせよ、成人して社会に出るニューロダイバース人材の数が増えるにつれ、企業は従業員と株主、そして顧客のニューロダイバーシティ採用に対する関心の高まりに対処しなければならない。
【編注】
神経発達の多様性を意味するニューロダイバーシティは、「自閉症やADHDのような非定型発達は、人間のゲノムの自然で正常な変異である」という捉え方に基づく概念である。そのような資質を持つ人々は、特定領域で平均を超える優れた能力を備えていることが多いとされる。ニューロダイバース人材(非定型発達者)の採用に取り込む企業の動向については、「ニューロダイバーシティ:『脳の多様性』が競争力を生む」(DHBR2017年11月号)も参照されたい。
"Is Your Company Inclusive of Neurodivergent Employees?," HBR.org, February 16, 2022.