
データに基づく意思決定が求められる中、勘に頼った判断は非難されがちだ。しかし、感情や経験という、ある種のデータから生み出される直観の価値を過小評価すべきではない。分析的思考と組み合わせることで、意思決定の質、速度、精度が上がることが証明されている。本稿では、直観が強力な意思決定ツールになる理由を論じたうえで、直観を活用するための5つの方法を紹介する。
予感、本能、ひらめき。いわゆる「勘」(gut feelings)を意味する表現はさまざまだが、要するに、意識推論をすることなく、瞬間的に物事を理解する能力のことだ。言い換えれば、答えや解決策が頭に浮かぶが、その理由や経緯を認識していない場合を指す。
ビッグデータの時代、自分の勘に頼ることは、いわれのない非難を受けがちだ。「直観」(学術研究で「勘」を言い表すのに使われる用語)は、信用できない霊感のようなものだとして退けられることが少なくない。
たしかに直観が間違うこともあるのは事実だが、研究によれば、分析的思考と組み合わせることで、意思決定の質、速度、精度が上がり、知性だけに頼るよりも、自分の選択に自信が持てるようになるという。考えすぎていたり、唯一の明確な「正しい」選択肢がなかったりする時は、特にそうだ。
実際、トップエグゼクティブを対象に行われた調査では、大多数のリーダーが危機に対処する際、感情や経験に基づいた意思決定を下していることが示されている。米国海軍でさえ、船員や海兵隊員の第六感を磨くために、数百万ドルを投資している。まさに戦場のような緊迫した状況では、直観が知性に勝ることがあるからだ。
勘の科学
社会通念とは相容れないが、直観には神経学的な深い根拠がある。科学者が腸(gut)を「第二の脳」と呼んでいるが、それには理由がある。消化管には全体にわたり、1億個の神経細胞からなる広大な神経ネットワークが張り巡らされている。その数は、脊髄に存在する神経細胞よりも多く、腸の驚くべき処理能力を示している。
物事を直観的に判断しようとする時、脳は腸と連動して、あらゆる記憶、過去に学習した事柄、個人的欲求や嗜好を素早く分析し、その状況に応じて最も賢明な決断を下す。このように、直観とは感情と経験に関わるデータの一種であり、リーダーが価値を置くべきものである。
直観を意識的に使っていない場合であっても、おそらくはその恩恵を日々受けているはずだ。決断を前にして、胃に穴が空くような感覚を覚えることは誰にでもある。それは、腸がはっきりと語っているのだ。
たとえば、あなたがマネジャーの場合、直属の部下の気持ちを「読み取る」ことができれば、彼らがやる気をなくした時にそれを察知し、再びやる気にさせる手立てを講じることができる。同様に、プロダクトデザインに対する直観的な評価が、クリエイティブプロセスを正しい方向へ導くこともあるだろう。