●「スナップ・ジャッジメント・テスト」を試す

 直観に対する信頼を高め、脳で考えすぎることなく決断を下すためには、瞬時の判断や評価に頼ることだ。「スナップ・ジャッジメント・テスト」で、即断即決することを試してみよう。

 紙を用意して、そこに「今回の昇進を承諾することは、自分にとって幸せなことか」といった問いを書き出し、その下に「イエス」と「ノー」を記載する。ペンは近くに置いておく。

 数時間後、紙を置いた場所に戻り、即座に自分の答えに丸をつける。そこで出した答えは、それが特に重大な質問である場合、自分にとって好ましいものではないかもしれないが、自分自身の正直な考えを引き出す機会になったはずだ。 

 ●自分が大切にしている価値観に立ち返る

 中核的価値観とは、その人にとって何が最も大切かを表すものだ。たとえば、自由、多様性、安定、家族、平穏などが挙げられるだろう。

 あなたがいま、仕事が何一つ思い通りにいかなかった長い一日を終えたばかりで、感情が昂っているとしよう。そこで、自分にとって大切な価値観とは何かを思い出せば、いら立ちの原因を突き止め、その正体をより明確に理解できるはずだ。

 たとえば、あなたは「正直であること」を大切にしているのに、重要な問題に関して自分が本音で話せていないように感じ、それが不安や葛藤の原因になっているのかもしれない。自身の価値観に照らして、自分の中で何が違和感につながっているのかを確認し、状況を把握しよう。

 今日、さっそく少しの時間を設けて、自分が大切にしている価値観についてじっくりと考え、その上位3つを見定める。そして、次に決断に迷った時は、「どの行動や決断であれば、それらの中核的価値観に近づけるか」を自問する。内省することは、堂々巡りになりがちな精神的葛藤を和らげる助けとなるはずだ。

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 最後に、忙しく、ストレスの多い環境では、直観は力を発揮しないことを心に留めておいてほしい。思考を巡らせ、さまざまなつながりを見つけられるように、心の余裕を持っておきたい。

 直観は完璧ではないが、現時点で十分に活用されていない意思決定ツールであることも忘れないでほしい。本稿で紹介した方法を試してみれば、直観が意思決定ツールとして、あなたが思っている以上に強力であると理解でき、驚くことになるだろう。


"How to Stop Overthinking and Start Trusting Your Gut," HBR.org, March 10, 2022.