意思決定に直観をどう活かすか
感受性の高いリーダーは直観も人一倍強いが、そのような感覚データの利用を抑制されてもきた。感受性の強さという特性は、情報の認識、処理、統合に深さをもたらすが、そこには他者の感情世界に関するデータも含まれる。
それはつまり、感受性の高い人は人一倍、直観が発達していることを意味する。なぜならば、自分のナレッジ(知識)バンクに、世界や自分自身に関する新たなデータを常に追加しているからだ。唯一の問題は、おそらくそれを自分の強みだと思わないように教えられてきたことだ。
幸いなことに、直観とは筋肉のようなものであり、意識して練習すれば鍛えることができる。自分のキャリアの中で、直観を意思決定ツールとして役立てるための方法をいくつか紹介しよう。
●直観と恐れを識別する
恐れは、抑圧や過小評価といった身体感覚を伴う傾向がある。緊張や焦り、絶望を感じたりすることもある。恐れには、何かを強いるような、あるいは脅威や拒絶、罰を避けたいがためにある選択肢を選ばせるような、プッシュ型のエネルギーがある。また、恐れによって自己批判的な思考に支配される傾向があるため、身を隠したり、人に従ったり、自分自身に妥協したりする衝動に駆られやすい。
それとは反対に、直観にはプル型のエネルギーが備わっている。たとえリスクを追求したり、人に遅れを取ったりすることになっても、その選択に引っ張られることで最も利益のある方向に向かっているように思える。たいていの場合、刺激や期待感、あるいは安らぎや満足感が伴う。身体的な面では、勘は身体をリラックスさせる傾向がある。直観に耳を傾ければ、あなたの内なる声はよきメンターのように、冷静沈着で賢明なものとなる。
●小さな決断から始める
服を選ぶ時、あまり多くの条件を検討せず、自分が「呼ばれた」と思うものを選んでみる。会議の場では、自己検閲せずに、手を挙げて発言してみる。直観の利用に慣れるためには、瞬時に決断して、小さな結果を伴う行動を取ればいい。
重圧を感じないように、小さな決断から始めて徐々にステップアップしていけば、プレッシャーのかかる大きな決断も自分を信用して下せるようになる。このアプローチが効果的な理由は、苦痛耐性、すなわち不安に直面した時に感情を制御する能力が養われるからだ。
●選択肢の「試運転」をしてみる
直観を使い始めても、最初はすぐに決断できないかもしれない。その場合には「考えすぎ」の状態に陥らないように、ロールプレイをしてみることだ。
たとえば、自分がオプションA、つまり最良の選択肢「新しい業界に転職する」を選んだつもりで、2~3日行動する。自分がどのように考え、感じるか観察してみよう。次にオプションBとして、自分にとって次善の選択肢「現在のキャリアパスをこのまま進む」を2~3日試す。
実験を終えたら、自分の反応を吟味する。決断した結果をシミュレーションすることで、自分が本当に望む結果なのか、自分にとってどの選択が最善なのかがよくわかるだろう。
ほかにも、コイントスで出した答えについて、自分がどのように感じるかを試す方法もある。コインの表が出たら「大口の取引を断る」とした時、喜びや安堵の気持ちが湧くだろうか。それとも、不安や恐怖に襲われるだろうか。