(2)コミュニケーションの境界を明確にする
リモートワークでは、同僚や上司がチャットをできるタイミングなのか、仕事に集中しているのか、あるいは家族とくつろいでいるのか、わかりにくいことが多い。それによって気まずくなったり、じゃまされたと感じたりする。
もちろん、これは新しい問題ではない。オフィスで仕事をする大きな利点の一つは、自然発生的な交流や割り込みができることだが、自分のペースで深く集中したい人はいら立ちを覚える可能性がある。
リモートワークは、このような問題の出発点に立ち返る機会になる。チームとして、次の2点を確認しよう。
・プラットフォームごとに「交戦規定」を決める:リモートワークでは、メール、チャット、ビデオ通話、ドキュメンテーションなど、さまざまな優先度や緊急度の仕事をさばかなければならない。理想は、それぞれのプラットフォームで互いに何を期待するのか、チームで明確に定義しておくことだ。チャットのダイレクトメッセージで返信が翌日になるのは許容範囲か。メールはどうか。会議に出席しなかった人は、会議の録画を必ず見なければならないか、それとも任意か。このような約束事があれば、機会を逃すことに対する不安や恐怖心を大幅に軽減できる。
・勤務時間を明確にする:休暇も含めて、自分の勤務時間をカレンダーに明示的に記録し、他の人にもわかるようにする。ある人が重要な企画書を書くために午後の時間を空けているのに、ミーティング中ではないから割り込んでもかまわないだろうと考えるのは現実的ではない。自分がじっくり考える時間を取っているなら、その時間は周囲を遮断できなければならない。
(3)ドキュメンテーションとアーティファクトを大切にする
重要な情報をアーカイブして、検索可能なドキュメントを作成するという文化を会社全体で構築することにより、個人やチームや部門において、これまでの経緯を踏まえた効果的な意思決定を下せる。
たとえば、ソフトウェアの開発チームの場合、新しい機能やシステムの変更の一つひとつについて、そのアプローチに関する合意を形成しながら設計書に反映させる。これらの設計書を、当時の状況を示すスナップ写真のようにアーカイブしておけば、なぜそのような決定がなされたかを、次に担当するエンジニアがより深く理解できる。あるいは、新しい従業員が自分の担当する仕事の原点を知りたい時も、このようなアーカイブが貴重な資料になる。
さらに、企画書や設計書をオープンな場で作成し、その仕事に協力やコメントをしやすい文化を促すことで、別の人のドキュメントを読み解き、理解し、会社全体を正しい方向に推進する能力が養われ、従業員の士気と当事者意識が高まる。