●仕事と人生について、従業員の優先順位はそれぞれ異なる
従業員は仕事に関して、自分が「やる価値があること」を再定義している。すなわち、自分は仕事に何を求めるか、仕事を通じて何を得たいのかを導く方程式を修正しているのだ。
調査では、コロナ禍前と比べて仕事よりも家族や私生活を優先する傾向が高いと、従業員の47%が回答している。自身の健康とウェルビーイングを優先するようになったと答えた従業員は53%に上る。この数字は、子どもがいる従業員の場合は55%、女性の場合は56%と高くなっている。
彼らは、口先だけでそう言っているわけではない。「グレート・リシャッフル」(大改造)の終わりは見えない。調査の結果、Z世代とミレニアル世代の52%が、年内に転職することを考えており(前年比で3パーセントポイント上昇)、実際に全回答者の18%が過去1年の間に仕事を辞めたという。その最大の理由として挙げられたのは、ウェルビーイング、メンタルヘルス、ワークライフバランス、そして労働時間の柔軟性の欠如だった。
転職先に何を求めるかという質問で最も多かった回答は、ポジティブな文化(46%)、ウェルビーイング関連の福利厚生(42%)、目的意識や意義(40%)、労働時間の柔軟性(38%)、そして2週間以上の休暇(35%)の順番で、それぞれ拮抗する結果となった。
このような新たな期待に応えることは、従業員にとってよい結果をもたらすだけでなく、組織が競争優位を獲得し、それが最終的に業績を押し上げる。既存の従業員に対するエンパワーメントを可能にするとともに、新たな人材を組織に引き寄せる呼び水になるのだ。
●マネジャーは、リーダーと従業員の間で板挟みになっている
マネジャーは、従業員特有のニーズを最も近くで見ている人間として、重要な役割を担っている。しかしながら、従業員の新たな期待と、リーダーによる意思決定との間で、彼らは身動きが取れないと感じている。筆者らの調査では、マネジャーの半数以上(54%)が、自社のリーダー層は従業員のことをまったくわかっていないと感じていた。
そのことをよく示す数字がある。筆者らの2021年の調査で、従業員の73%が、フレキシブルワークという選択肢が今後も長期的に継続されることを望んでいたが、リーダーの50%は、2022年には従業員にオフィスでのフルタイム勤務を義務付けるか、これから義務付ける予定だと答えている。
2年以上にわたり、リモートワークやハイブリッドワークを経験した結果、従業員はフレキシブルワークに何とか慣れてきただけでなく、かなり上手に対応できるようになったと感じている。調査では、従業員の80%が、生産性は以前と同レベルかそれよりも高まったと考えていた。リーダーの54%が、リモートワークもしくはハイブリッドワークに移行したことで、自分のチームの生産性が低下したのではないかという懸念を示していたのとは、実に対照的な結果だ。
マネジャーは、従業員とリーダーを見て、双方のことを理解できる最も重要な立場にある。ただし、行動を起こす権限が与えられていなければ、あまり意味はない。マネジャーの74%が、自分のチームのために変化を起こすうえで必要な影響力やリソースを持っていないと答えたが、ここは明らかなギャップとして対処が必要だ。