(2)マネジャーが現場でスキルを向上できるように環境を整備する

 企業は、フロントラインマネジャーが簡単に活用できる方法で、このようなベストプラクティスを継続的に強化する必要がある。

 デスクワーク中心のマネジャーは、従来のバーチャル研修でスキル向上を図ることができるかもしれない。しかし、フロントラインマネジャーは常にPCを使用しているわけではなく、定期的に確認するメールアドレスすら持っていない場合がある。

 このような状況を考えると、企業はフロントラインマネジャーにスキル向上の機会を提供するための新たな方法を採用すべきだ(スタートアップの中には、デスクを持たない従業員でも勤務中に簡単にアクセスできるよう、スマートフォンから受講できる短時間の研修を提供する企業もある)。

(3)フィードバック体制を強化する

 フロントラインマネジャーはほとんどの場合、パフォーマンスフィードバックを受ける機会があったとしても、その機会は極めて限定されている。

 BCGが最近、ある大手小売企業と協働して、店舗マネジャー向けに個々の能力開発計画と体系的なフィードバックプロセスを導入したところ、フロントラインワーカー全体のエンゲージメントスコアが2倍以上になった。

 店舗マネジャーには、スーパーバイザーとともに能力開発目標やキャリア目標を設定し、四半期ごとに進捗状況を確認する公式の機会が設定された。それ以外にも、毎週ミーティングが実施され、より戦術的なパフォーマンスフィードバックを受けている。

(4)時間給労働者に対する「支援体制」を再考する

 どれほど優秀なフロントラインマネジャーがいても、何にも増して重要な人事制度や仕組みがなければ、フロントラインワーカー全員の幸福度を高めたり、エンゲージメントを向上させたりすることはできない。

 企業はオンボーディングやスキル構築プログラムに投資し、これらに参加する時間をフロントラインワーカーに与えることも必要だ。それぞれの生活に合わせて、より柔軟なスケジュールを設定できるように、スケジューリングプロセスやシステムを調整する必要もあるかもしれない。

 また、キャリアパスを整える必要もあるだろう。自身が進歩し、成長を遂げるために、今後どのような機会があるかを具体的に把握できるようにする。このようなアプローチの設計と実施において、フロントラインマネジャーは中心的な役割を果たすべきだ。

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 優れたフロントラインマネジャーを育成し、それを強力な人事ポリシーとリソースで補完することにより、企業はフロントラインワーカーの満足度とエンゲージメントをいっきに押し上げることができる。そうすれば、離職率は大幅に低下するはずだ。


"Why U.S. Frontline Workers Are Quitting," HBR.org, March 14, 2022.