リクルートに学ぶ
個を活かす仕組み
さて、今号の特集は「パーパス経営」です(内容の詳細は「パーパスを策定する『目的』 とは何か」に譲ります)。
いま、企業はパーパスを策定し、それを掲げ、社員の自発性や創造性、起業家精神を促そうとしています。バートレットとゴシャールは四半世紀前から、パーパスやプロセス、人材の持つ価値を説き、社員のそうした特性を取り戻すような「個を活かす企業」に変わる意義を述べていました。
実際にパーパス特集内で引用されているリクルートも、代表的な「個を活かす企業」です。
失敗を奨励し、仕事の兼務を認め、複数の目を通じたフィードバック文化を築き、個々の成長機会を与えています。企業の価値観として「個の尊重」を掲げ、英語表記で「BET ON PASSION」と表現するように、情熱を傾けた個人の取り組みに「賭ける」という意思決定を行っています。
ユニークなのは近年、会社として「部活動」を推奨していることです。上司と部下のタテの関係、同僚同士のヨコの関係だけでなく、趣味や関心事でつながるナナメの関係づくりをデザインし、人的ネットワークの密度を高め、組織の活力につなげています。
何より、テクノロジー企業でありながら、HRツールに頼りすぎていないことは注目に値します。
北村吉弘・リクルート社長は、DHBRのイベントにおいて、「(新規プロジェクトを行う際、)乾いたデータベースを叩くよりも、人との関係性の中から適任者を探すほうが実効性は高い」と話しました。
社員の過去の経験やスキル、能力をデータベース化し、その細分化を進めたことで、むしろ候補者が見つけにくくなったそうです。システムの重要性を認めながらも、個人の力とその個人が持つ人的ネットワークの価値をより見出したのです。
我々も最新のシステムやツールに目が奪われがちですが、「個を活かす」というレンズを当てて特集号をご覧いただくことで、きっとさまざまな気づきがあるはずです。
ぜひご一読ください。
(編集長・小島健志)