●経営幹部と協力して思いやりを高め、パフォーマンスに関する対話を変えていく

 筆者らの経験では、経営幹部のほとんどが従業員の問題についてより深く理解できれば、もっと思いやりを示そう、よりよい支援を提供しようと思えるようになる。

 そこで、思いやりのあるリーダーシップの責任をトップリーダーと共有するために、中間管理職が最初にやることは、データを共有する(問題について「伝える」)ことと、問題を直接体験させる(問題を「見せる」)ことを通じた、経営幹部の教育である。

「伝える」とは、問題の大きさや現場の従業員が体験していること、それが中間管理職にどのような影響を与えるかをトップリーダーに認識させ、情報の流れを修正するということだ。

 どれくらい多くの人がどのような苦労をしているのか、その苦労に対処するために何が必要かなどに関して、基本的なデータを提示するだけで大きな違いが生まれる。そのようなデータの提示を手助けするために、中間管理職は簡単なパルスサーベイ(意識調査)を行い、従業員のエンゲージメント、懸念、ストレスレベルを把握することができる。

「見せる」とは、直接の体験に勝るものはないということだ。リーダーは、従業員が思いやりを必要としている現状を直接見聞きすることで、彼らにより共感できるようになる。

 これは、直属の部下と上司の会話の緩衝材となり、話の流れをコントロールしたがる一部の中間管理職にとって、本能に反する助言だろう。このような細かいことで上司を煩わせたくないという中間管理職もいる。だが、休憩時間の私的な会話のように、役職の階層を超えたやり取りを可能にして、トップが従業員と直接対話できるようにすれば、経営幹部ははるかに優れた共感力を備えることができ、問題解決に貢献できるだろう。

 いずれのアプローチを実行する際も、フレーミングがとても重要になる。このようなアプローチは適切にマネジメントしなければ、パフォーマンス目標を達成できなかった時、その場しのぎの言い訳に聞こえるだろう。

 組織からパフォーマンスに対するプレッシャーをなくせる(あるいは組織がなくそうとしている)と考えるのは無邪気すぎる。シニアリーダーが、思いやりをパフォーマンスに必要不可欠なものとしてリフレーミングし、現在のパフォーマンスだけでなく、長期的なパフォーマンスを著しく向上させるという視点で捉えられるよう手助けを行うべきなのだ。

 言い訳を回避する簡単なコツは、パフォーマンスに悪影響が出る前に、問題点を議論の俎上に乗せることだ。