●トップからのパフォーマンスに対するプレッシャーを軽減する
パフォーマンスに対するプレッシャーについて考えると言っても、組織はいまよりも低いパフォーマンスを目指すべきだという話では、けっしてない。問題は、よりプレッシャーが少なく、よりやる気を起こさせる方法で、シニアリーダーがいかに精力的に働きかけるかということだ。
前述の通り、現場の従業員の多くは「どのような」パフォーマンスを求められているのかは理解していても、「なぜ」求められるのかがよくわかっていない。したがって、会社が直面しているパフォーマンス関連のプレッシャーについて、従業員がよく理解し、納得できるようにすることが肝心になる。
筆者らの経験では、多くの上級幹部は、従業員には関係がないと思っている市場のプレッシャーについて、彼らにわざわざ説明しようとしない(従業員を積極的に守ろうとさえしない)。そのようなプレッシャーが、経営幹部が従業員に求めるものに影響を与えるなら十分に関係あるのだが、その点を認識していないことが多いのだ。
プレッシャーが存在する理由を従業員が理解できるよう手助けすることは、彼らの納得感を深めることにつながる。これと関連して、従業員が目的意識を持つことで、より意欲的に仕事に取り組むようになるという研究もある。自分の仕事が組織の最終的な目標にいかに貢献し、どのようにつながっているかを理解するために時間をかけることは、ストレスの軽減にもつながるだろう。
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言うまでもなく、これらはすべて、中間管理職にレジリエンスがあるかどうかで決まる。マネジャーが燃え尽きたら、部下を効果的に支援することはできない。したがって、管理職はセルフケアに時間と労力を惜しまず、自分を支えるネットワークを充実させることだ。そして経営幹部は、組織全体の利益のために、本稿で説明したような行動の模範となることを忘れてはならない。
"Managers Are Trapped in a Performance-Compassion Dilemma," HBR.org, April 07, 2022.