オンボーディングを成功させるカギ

 オンボーディングプログラムの期間が短いことだけが、新規雇用者の体験の質を下げているわけではない。入社間もない従業員は職場で、マネジャーや同僚、主要なステークホルダーとの関係を築く機会も必要としている。

 実際、ギャラップの報告書によれば、マネジャーがオンボーディングプロセスで積極的な役割を果たした場合、「素晴らしいオンボーディング体験をしたか」という質問に対して、従業員が「非常にそう思う」と答える割合が3倍以上になるという。

 とはいえ、多くのマネジャーは、オンボーディングプログラムをサポートしたり、実施したりする能力に欠ける。さらに、ほとんどの中小企業は(そして一部の大企業も)メンターシッププログラムを提供していない。新規採用者にメンターシップの機会を提供できない企業は、新規採用者が新たな労働環境で活躍するのに必要な関係を築くチャンスを奪っているといえる。

 新規採用者一人ひとりの職場体験をポジティブなものにすることは、マネジャーであるあなたの仕事だ。しかし、効果的なオンボーディングプランを作成するのに必要なステップを理解するのは、荷が重すぎると感じるかもしれない。

 以下の3つのステップは、新規採用者が活躍できるよう準備を整え、従業員の定着率を向上させる戦略的なオンボーディングプロセスを、マネジャーが構築するのに役立つだろう。

(1)明確な目標と成功の基準を設定する

 新しいオンボーディングプログラムを確立する前に、まずはオンボーディングの目標を見直すことから始めなければならない。見直しにあたっては、その目標が「4C」、すなわち「コンプライアンス」(Compliance)、「明確性」(Clarification)、「文化」(Culture)、「つながり」(Connection)の4つの要素を満たしていることを確認する。ここでは、以下の問いに答える必要がある。

・従業員が順守すべき規則、方針、手順を明確化し、説明しているか。

・従業員の仕事に対する期待値を明確に設定し、具体的かつ期限を定めた基準に結びつけているか。

・オンボーディングプログラム修了後、従業員が自社の企業文化を十分理解できるものになっているか。また、従業員の活躍に不可欠なあらゆる関係を構築するためのサポートが得られるものになっているか。

・新しいオンボーディングプログラムを実施するために、組織能力のどの部分を改善する必要があるか。

・オンボーディンプログラム修了後、どのようにして新規採用者のワークライフバランスを継続的に改善し、維持するか。

 4Cのすべてに対応する一連の目標を設定したら、次はどのように成功を測るか、基準を決める。その基準は目標と直接的に結びつき、量的指標(例:1年後も会社に在籍している新規採用者の比率)と質的指標(例:オンボーディング体験に関する新規採用者からのフィードバック)の両者を含むものにしなくてはならない。

 このような目標と基準にたどり着くには、組織全体のステークホルダーからのインプットが必要となる。そのため、物事を先に進める前に、必ず会社のリーダーと面談する時間を取ることだ。