(3)オンボーディングの全期間を通じてサポートを提供する

 オンボーディングの間、マネジャーは新規採用者の管理業務に費やす時間を減らし、パフォーマンスコーチングやつながりを形成するための時間を増やすことに集中すべきである。

 HR部門がマネジャーのために、このような主要タスクに対応する技術プラットフォームを用意するのが理想的だ。それらのツールを利用すれば、マネジャーはオンボーディングプロセスのどの段階でも、リアルタイムでベストプラクティスを実行し、追跡することができる。以下は、その例である。

・新規採用者には、入社前に会社のオンボーディングポータルに登録してもらう。このポータルでは、ウェルカム動画を見たり、入社時に必要な書類を作成したり、初日のスケジュールを確認したり、カスタマイズされたオンボーディングプログラム全体の情報を受け取ることができる。マネジャー側も、新規採用者が入社することを、関係するステークホルダー全員に通知済みかどうかをチェックできる。

・オンボーディングの初日、マネジャーは新規採用者がその日のスケジュールを完了できたかどうかを追跡できる。たとえば、主要なステークホルダーに紹介されたか、個人用の作業スペースに配置されたか、業務用のツールを受け取ったか、初日の学習プログラムを完了したか、などだ。また、初日の体験について新規採用者からフィードバックを受け、必要に応じて是正措置を取ることもできる。

・それ以降は、新規採用者が重要な社内情報を読んだかどうかをモニタリングしたり、eラーニングモジュールの完了状況や合格率をチェックしたり、オンボーディング体験がオンボーディングの主要目標達成に与えた影響を、個人レベルやコホートレベルで評価したりすることができる。

・オンボーディングプログラムが終了した時には、オンボーディングの各目標の達成度を示す包括的なデジタルダッシュボードができ、狙い通り機能しているものや改善が必要なものが見えてくる。

 最後に、この新しいプラットフォームを全社的な人事管理システム(HRMS)と統合することが欠かせない。それにより、オンボーディングが新規採用者の実際のパフォーマンスや満足度に与えた影響を簡単に追跡することができる。

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 企業が優秀な人材を定着させることに苦労しているいまの時代、新規採用者のために強力なオンボーディングプロセスを構築することは不可欠だ。戦略的なオンボーディングプログラムを実施することで、マネジャーは新規採用者に自信を持たせ、エンゲージメントを向上させ、長期的に人材が定着する環境をつくり出すことができるだろう。


"Onboarding Can Make or Break a New Hire's Experience," HBR.org, April 05, 2022.