●採用プロセスに従業員を参加させる

 多くの従業員が、自社の採用活動は自分が参加するものでなく、決定後に知らされるだけのものという印象を持っている。採用活動に直接関与したり、影響を及ぼしたりすることは叶わず、自分にできることはないと思っているのだ。

 採用活動は、新たな人材を迎え入れたり、これまでにない視点を取り入れたりする機会になる。それだけでなく、既存の主要スタッフのエンゲージメントを高め、彼らの心に再び火をつける機会にもなりうる。

 たとえば、空きポストの求人を行う際、そのポストに要求されてきた職務内容をそのまま提示するのではなく、マネジャーが部下と意見を交換し、その職務内容が現在も妥当かどうか話し合おう。求人を改善するために、メンバーの力を借りるのだ。

 このプロセスは、対外的なメリットに加えて、対内的なメリットをもたらす。空きポストの職務内容を読むのは、応募者だけでない。既存の従業員がこっそり目を通していることも珍しくないのだ。

 理想的な職務記述書とは、そのポジションで果たすべき職責と自社のパーパスとの結び付きを表現できているものだ。既存の従業員がそのような職務記述書を読むことで、いまの会社への就職を決めた時の喜びと興奮を思い出すことができる。自分の日々の業務と、より大きな目標とのつながりを再認識できるのだ。

 ●従業員の業務と大きな目標を結び付ける

 筆者らの調査では、25~45歳の労働者のうち、自分の目の前にある業務と、より大きな戦略的インペラティブ(必須事項)との結び付きつきを感じていると回答した人は約半数に留まった。一方で、5600人の回答者の大多数(92.4%)は、日々の業務が会社全体にどのような影響を与えるのか理解できたほうが、よりよい仕事ができると答えた。

 従業員にそのような結び付きを感じさせるために、あなた自身が果たすべき役割を考えよう。組織としての必須事項を言い渡すだけでなく、「自分とどのように関係するのか」と疑問を抱くチームメンバーのために、結び付きをわかりやすく示すよう努める。毎日の、毎週の、毎月の、毎四半期の業務と、会社全体の長期目標との直接的な関わりを理解できるよう支援するのだ。

* * *

 優秀な従業員が退職を検討し始めている状況を眺めている場合ではない。退職以外の道筋、その従業員が魅力的だと感じるような道筋を示すべきだ。

 従業員が主体的に行動できるようにして、エンゲージメントを再び高め、やる気を刺激することで、自分が最高のパフォーマンスを発揮できていると実感できるような環境をつくる。それにより、従業員が組織との関わりを再度強化し、チームビルディングに貢献するような行動が増えるだろう。

 従業員は、退職意思を告げるためにオフィスにやってくるのではなく、会社に献身する意欲を取り戻し、職場で活躍するための努力を重ね、エネルギーに満ちた状態でオフィスにやってくるに違いない。


"How to Re-Engage a Dissatisfied Employee," HBR.org, May 19, 2022.