リスク緩和策
●訴訟を検討する
想定外の連想がどこで生じるかにもよるが、著名人により自社のブランドロゴがテレビや公のイベントで露出されるのを防ぐために、法的手段に訴えることができる。ただし、そのような出来事が他国で生じた際は――その国の政権が敵対的な場合は特に――法的手段は効果を発揮しない可能性が高い。
たとえブランドロゴが目立たなくても、ロゴを見ている人たちはその製品を認識し、問題のある人物や出来事と製品が関連しているという噂を広めるかもしれない。報道によれば、プーチンの専属スタイリストは、彼の着る服からラベルを剥ぎ取り、高価なブランドが注目されるような事態を防いでいるという。だが、ロゴがなかったとしても、消費者はしばしば、高級ブランドならではの製品特性を認識するものだ。
●製品へのアクセスを制限する
ほとんどの国において、製品を供給する側は、取引したい相手としたくない相手を選ぶ権利がある。トヨタはサプライチェーン・インテグリティ(完全性・誠実性)を守るための手順を設けており、自社製の車両を準軍事活動やテロ活動のために使用または改造する可能性がある顧客には、車両を販売しないという方針を採用している。
英ロンズデールは、ドイツで過激派と関係する店舗への衣料品の供給を拒否した。ラコステはノルウェーの警察に接触し、自社の服をブレイビクに着用させないよう要望を出した。
とはいえ、誰かに対して、あるブランド製品の着用や入手を永久にやめさせることは、通常であれば不可能だ。仲介者や中古市場を使えば、誰でも製品を購入できる。
ロロ・ピアーナ副会長のピエール・ルイジ・ロロ・ピアーナは、イタリアの新聞にこう語った。プーチンが同社のジャケットを着ていることには「やや困惑させられる」ものの、「当社がどちらの味方なのかは明白です。ウクライナの人々に、私たちは最大限の精神的支援と実質的支援を提供します」
●製品を廃止または改変する
ネガティブな連想が生じうるのが単一の製品やブランド要素(エレメント)のみの場合、ブランドポートフォリオを変更するか、製品ラインの廃止を検討してもよいだろう。これによる犠牲は、短期的には売上の減少をもたらすかもしれないが、ブランドの長期的な健全性の保護に貢献する。
バーバリーは数年にわたり、自社の衣料品からチェック柄を減らして、目立たないようにするという決断を下した。同時に、より大胆なデザインを取り入れ、ファッション界の潜在的オピニオンリーダーたちへのアピールと、ブランドの高級イメージの刷新を図った。また、ザ・バーバリー・ボーイズの間で人気だったベースボールキャップの生産停止まで踏み切った。