●強力な対応策を立案する

 レピュテーションに影響を及ぼしかねない事態が起きた時は必ず、強力なPR施策を展開し、状況を制御することが重要だ。まず、誰がブランドの公式のエンドーサーで、誰がそうでないかを明確にする必要がある。

 経営陣が、声明のみでは不十分という懸念を抱いている場合は、マーケティングキャンペーンによってブランド認知の再調整を図ることができる。新たなメディアキャンペーンでは、好ましいロールモデルを起用し、ブランドにとって望ましいユーザー層は誰かを人々に改めて伝えることで、ユーザーイメージの歪みを矯正したり、対処したりするとよい。

 近年のバーバリーは、歴史的なチェック柄をゆっくりと復活させ、ユーザーに対して望ましい連想を促すために、野心的なデザイナーやインフルエンサーたちとのコラボレーションに努めている。

 ロンズデールは、過激派が支持するイデオロギーとは正反対のPR施策を始めた。2003年に「ロンズデールはすべての色を愛しています」(Lonsdale Loves All Colours)という広告キャンペーンを立ち上げ、さまざまなバックグラウンドを持つファッションモデルたちを起用し、寛容であることを促すイベントや、思想的に左寄りのスポーツクラブを後援した。

 これらの取り組みを世間が見逃すことはなかった。人種差別反対派はロンズデールの支持を決め、このブランドを着用するようになり、純粋な極右というイメージに変化をもたらしたのだ。

 アバクロンビー&フィッチは、物議を醸しているリアリティ番組『ジャージー・ショア』の出演者の一人が、自社の服を着ていることに気づいた。そして、番組内で自社ブランドの着用をやめれば、出演者たちに金銭を支払うと申し出た。

 出演者たちが、この提案を真剣に受け入れることはなさそうだが、PRとしては賢いやり方だ。マイナスとなりかねない出来事を、ポジティブな宣伝へと変えたからである。

 経営者は、このような事例から学ぶことができる。筆者らが得た教訓をいくつか挙げておこう。

・ブランドを非公式に推奨する著名人やセレブリティや集団とは、速やかに距離を置く。

・望ましくないブランドアンバサダーやユーザーグループに関連する有害な行為により、苦痛を被る可能性がある人々に対し、思いやりを示す(ウクライナの人々を支援すると述べたロロ・ピアーナが例)。

・有害な著名人やグループが自社のブランドにもたらしうる金銭的影響(売上高の増減など)については、コメントしない。

・暗黙のうちに定着した可能性があるネガティブなブランド連想を打ち消すような、追加のPR施策を検討する(好ましいロールモデルの起用や、望ましいイメージを強化する広告キャンペーン)。

長期的な影響

 望ましくない、かつ想定外の形でブランドを推奨されることは、避けられないかもしれない。正しい行いには代償が伴う場合もあり、忍耐と粘り強さが求められる。ロンズデールが過激派と距離を置くようになってから、ドイツでの売上げは35%減少した。同社の継続的な努力にもかかわらず、多くの欧州人はいまだに、同社のブランドを極右と結び付けているように見える。

 幸いにも、発生しうる損害を軽減するための対策が存在する。必ず弁護士に相談し、強力なPR施策を考案し、マイナスの状況をポジティブな宣伝へと変えるよう最善を尽くすことだ。たとえ緩和策が奏功しなくても、後悔するよりは用心しておくほうがいい。


"What To Do When the Devil Wears [Your Brand]," HBR.org, May 25, 2022.