8 たとえ口では変化を望むと言っても、変化を受け入れない
組織に空席のポジションがあるのは、現状を改善する人材を必要としているからである。よりよい商品をつくる、業務を効率化する、新たなクライアントを引きつける、部署のパフォーマンスを向上させるといったことを実現できる人材だ。ビジネスの向上には、変化が求められる。
筆者のクライアントであるデイビッドは、前の会社で顧客サポート業務の改善のために採用された。部署の方向転換のために雇われたはずだったのに、結局のところ、変化を望まず、むしろ変わることに脅威を感じていた上司の上司にあたる女性が権限を握っていたため、なかなかデイビッドの思うように事は運ばなかった。筆者がデイビッドに、面接の時点で何か危険信号はなかったかと聞くと、彼女にこう言われたことをデイビッドは思い出した。「私は以前その業務を担当していたので、私なりの意見を申し上げることがあるかもしれません」
その時点では、デイビッドはこの言葉をさほど気に留めなかった。たいていのマネジャーは意見を持っているからである。しかし「もし違う意見を持つ人がいたら、どう対応しますか」などと簡単なフォローアップ質問をしてみれば、重大な危険信号が見えたかもしれない。彼女の言葉やボディランゲージから、もっと有益な情報が得られたかもしれないし、彼女が意見の対立にどう対処してきたかを彼女の同僚から聞き出せたかもしれない。
残念ながら、「嫌なら出ていけ」が彼女のやり方だった。さらに悪いことに、彼女がその業務に携わっていたのは何十年も前のことだった。その頃から今日までに、彼女がまったく馴染めないテクノロジーをはじめ多くの変化があったにもかかわらず、彼女はデイビッドが推奨した効率的な手法やテクノロジーよりも、1980年代以降使われていない時代遅れのやり方を好んで、デイビッドの改善案を覆してしまった。これにはフラストレーションがたまった。デイビッドは毎日、やる気をくじかれ、苦戦を強いられるのを感じた。
ストークスは、一部の採用担当マネジャーは「改善という思考態度が身についていないのです。時代の変化についていけず、ただ現状を維持したいだけのマネジャーもいます。そこをよく見分ける必要があります」と指摘する。
9 面接の回数が多すぎるか、面接プロセスが長引く
面接プロセスは、それ自体が効率的で、ステークホルダーの関与と連携が最適化(最大化ではなく)されており、2〜3カ月で完了するのが理想的である。面接の回数が多すぎたり、面接プロセスが長期に及んだりするのは、危険信号だ。そのどちらか(または両方)が起きるのは、チームや組織が合意形成に偏りすぎている、決断力に欠けている、または遂行能力に問題があるという兆候かもしれない。
面接の回数と面接プロセスの期間は、そのポジションのレベルに比例する傾向がある。たとえば、経営幹部候補者の面接プロセスは下位のポジションよりも時間がかかるだろう。よりリスクが高いし、他の経営幹部や理事会のメンバーも関与するからだ。
とはいえ、ペッパーコーンは10~12回は多すぎると考える(最高14回まで見たことがあるという)。これほど回数が多いのは、経営幹部候補者ならまだ理解できるが、ディレクターのレベルになると問題がある。「決めるのは、採用担当マネジャーであるべきです。なぜ14回も面接をする必要があるのでしょうか。面接回数が多すぎるのは、その会社の組織体制や業務遂行能力の問題の表れなのかもしれません」。一部の企業、たとえばグーグルは人材獲得競争で優位に立とうとして、長引きがちな面接プロセスを短縮する積極的な手段を講じている。
10 期限付き内定を出す
厳しい回答期限を設けて内定を出し、その期限までに入社の決断をしなければ内定を取り消す企業も、ごく少数とはいえあることはある。
筆者のクライアントの1人は、ある会社から金曜の午後に内定を受け、月曜までに決断するよう求められた。彼はまだ第1志望の会社の面接の途中だったが、理想の会社を追う不確実性に耐えるか、内定という安全性をとるかのジレンマに苦しみ、プレッシャーに屈してすでに内定を出してくれた会社に決めた。(数カ月後に第1志望の会社の職を得て退職してしまったので、期限付き内定を出した企業には手痛い結末となった)。
期限付き内定は、基本的に最後通牒だ。最後通牒はそもそも気持ちのよいものではないし、熟考してキャリアを決断し、今後何年間かのキャリアと生計に影響する選択肢を比較検討したいという求職者の願いを尊重していない。
経営者の柔軟性の欠如、不安定性、いじめ行動さえ示唆している(人材市場で会社がどう見られるかについての認識がまったくないことは言うまでもない)。
あなたがある企業に入社したいと思うのは、そうするように脅されたからか、それとも心からそこで働きたいと望むからか。人や組織が見せる本性を見逃してはならない。期限付きの内定を出すような会社が、従業員の要望を尊重する可能性は低く、ハラスメント行為が横行していたり、融通の効かない独裁的経営手法が取られていたりする可能性が高い。
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新しい仕事がどういうものになるのか、完璧に予想できる人はいない。しかし、面接プロセスにおけるこの10の危険信号を見逃さなければ、最適でない選択肢を除外できるはずだ。面接で観察力を働かせ、面接プロセスがどう管理されているかに気を配り、的確なフォローアップ質問をして、しかるべき注意を払うならば、悪い選択をする可能性は減らせるだろう。
“10 Red Flags to Watch Out for in a Job Interview,” HBR.org, June 07, 2022.