レジリエンスにまつわる2つの落とし穴を理解する

 従業員のレジリエンス向上を助ける手段を検討する前に、以下の落とし穴のいずれか(または両方)がリーダー(および従業員)の行く手を阻んでいないか、立ち止まって考えてみよう。

 組織はレジリエンスを性格上の特性と考えている

 レジリエンスは、個人が持っているか、持っていないかのどちらかとして論じられることが多い。たしかに一部の人のレジリエンスには、「特性のような」安定性があるのは事実だ(例:どのような時や状況でも一定水準のレジリエンスを発揮できる)。

 しかし、レジリエンスをこのような形でしか考えない場合、従業員のみに責任を負わせ、適切な支援を提供する組織の役割を無視することになる。臨床心理学者のエイミー・アドラー博士は、この構造的な説明責任の欠如を「レジリエンスの影の部分」と表現している。この説明責任を欠いたまま従業員にレジリエンスの向上を奨励し続ければ、精神的消耗とバーンアウト(燃え尽き症候群)につながりかねない。

 レジリエンスを性格特性ではなく、どの従業員でも達成できる一つの状態と考えよう。そのためには、積極的にレジリエンスの実現を後押しして支える環境を育むことが求められる。

 あなたの組織は、従業員の懸念、ニーズ、アイデアに応えるために、声を挙げてリソースを求めるよう奨励する文化を築いているだろうか。困難への適切な対処を可能にする休暇、便宜措置、福利厚生の方針を設けているだろうか。

 想定外の困難もあるという理由だけでは、組織が対応策を設けなくてよいことにはならない。従業員は、流産やセクシャルハラスメント、メンタルヘルスの不調期などを予期できるとは限らないが、そのような潜在的状況に対処するための方針を、組織が事前に策定することは可能だ。

 この観点を通じてさらに浮き彫りとなることがある。レジリエンスの取り組みは、不平等を体系的に排除する取り組みの代替とすべきではないということだ。

 たとえば、人種的偏見と差別に遭っている黒人従業員に対し、根本原因に対処しないまま「レジリエンスを高めましょう」と奨励することは許されない。組織はインクルージョン(包摂)の文化の構築と、公平性を後押しする具体的方針の策定の両方に注力できる。

 組織のレジリエンスを本当に高めるには、2つのことが同時に生じうると認識しなくてはならない。まず、個々人は、プラス思考や活力、既存の社会的支援のネットワークといった、レジリエンスの向上に使えるリソースを蓄積できる。同時に組織は、前もってリソースを提供し、従業員の保護につながる改善を生む。個々の従業員のレジリエンスは、組織的な改善と支援の代替にはなりえないのだ。