困難に遭っている従業員に対し、組織が負の烙印を押す

 ポジティブな感情はレジリエンスの向上につながるが、人が困難な体験に対処している時には、しばしばネガティブな感情が生じる。これは人間の体験としては当然だ。実際にはネガティブな感情は、病的なほど極端になったり慢性化したりしない限り、個人のレジリエンスを阻害するものではない。

 ところが、職場で失望や不安、困惑を感じたり表明したりする人は、負の烙印を押されることが非常に多い。このため、従業員は非難されるのを恐れて支援を求めないかもしれない。

 組織的なレジリエンスの取り組みでは、レジリエンスを「つらい時にネガティブな感情を持たないこと」と結び付けるべきではない。むしろその関連付けは非現実的であり、適応性に欠けるだろう。感情を判断せずに受け入れるといったマインドフルネスの原則には、心身の健康増進をはじめよく知られた効果がある。

 望ましくない変化ののちに生じる失望感や、仕事と介護の両立に圧倒され、気が滅入ってしまうことは、「レジリエンスの欠如」ではない。従業員は目標に向かって努力する中で、複雑な感情体験を持つこともある。組織はネガティブな感情の抑制に努めるのではなく、それらの感情をシグナルとして、組織内の何かが対処を必要としているのかどうか、そして従業員を支援する最善の方法は何かを吟味するとよい。